ここまで、女性トイレの個室数を男性トイレの小便器数と個室数を基準に算出する考え方が中心だった。しかし阿部氏は、「その前提となる男性トイレ側の便器構成自体も、再設計が必要だ」と訴える。
実際、男性トイレでは、小便器は比較的空いている一方で、個室に列ができる場面が少なくない。現行の設計では、男性トイレの個室数が不足している可能性があるという。 もし、小便時のプライバシーが気になるため個室で小便をする男性がいるとしたら、小便器間の仕切り板の設置といった対策が有効となる可能性もある。
阿部氏は、こうした実態を踏まえ、ベースとなる男性トイレの小便器数と個室数についても、プライバシーを侵害しないセンサーや画像解析技術を活用し、客観的データに基づいて算定式を再構築すべきだとしている。
政府方針が示した「新たな動き」
こうした中、2025年に閣議決定された「骨太の方針2025」では、女性トイレの利用環境改善が政策課題として明記された。骨太の方針とは、政府の経済財政運営の基本方針を示すもので、各省庁の政策にも影響を与える重要な指針だ。
国の協議会が立ち上がり、ガイドラインを策定することにより、新設トイレにおける便器数の適正化や既存施設についても改善されるようになるだろう。しかし阿部氏は、協議会第2回で示された「女性便器数が男性便器数以上」という基準について、依然として女性便器数が不足することになり適切ではないと指摘する。
トイレ前の行列は単なる混雑ではない。利用者の不満や機会損失を可視化するサインだ。見過ごされてきた「当たり前」を更新できるかどうかは、鉄道事業者の経営姿勢そのものを映し出しているのではないだろうか。
