1990年代前半と比べると、「海の日」(1996年〜)や「山の日」(2016年〜)の設定により祝日数が増加したほか、2019年度から年5日の有給休暇取得が義務付けられたことが、休暇数の増加を通じて月間労働時間の減少に寄与したとみられる(下図)。
会社における各種ハラスメントを抑止する仕組みも整備されてきた。この点、筆者が就職した頃(=2010年頃)は、いわゆる「働き方改革」(2014年〜)以前だったということもあり、長時間労働やパワハラは日常の風景だった。筆者自身も、長時間労働については当然のこととして受け入れざるを得なかった。
もちろん心身の疲労は非常に大きく、日々うんざりしながら生きていたが、「仕事とは、サラリーマンとは、そういうものなのだろう」と半ば諦めていた。また、パワハラについても、筆者自身はそれほど受けたことはないが、社会全体としては、報道されたものだけでも痛ましい事案が多々あった。
こうした10年ほど前までの「ブラック」な労働環境に比べれば、2020年代の労働環境は驚くほど改善している(「ホワイト」化している)と筆者自身も強く感じている。
このほか、労働災害による死亡者数も昔に比べて大幅に減少している(1990年:2550件→2000年:1889件→2010年:1195件→2023年:755件〈出所:厚生労働省〉)。労働時間の面でも心理的・物理的安全性の面でも、全体として日本の労働環境が改善してきたことは間違いないと思う。
“働く目的”が変わってきている
労働環境が改善しているにもかかわらず、なぜ会社に対してネガティブな感情を持つ人が減らず、むしろ若年層を中心にFIRE願望が広がっているのだろうか。この点を検討するため、「働く」ことを人々がどう捉えているかに関するアンケート調査の結果を見てみよう。
内閣府が実施する「国民生活に関する世論調査」という調査がある。1940〜50年代から実施されてきた歴史の長い調査であり、様々な点に関する日本人の意識変化がよくわかる。
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【「あなたが働く目的は何ですか」】
