freeeがあえて投じた"AIエージェント"という一石の正体 SNSで異例の反響 「SaaSの死」論争の震源地で何が起きているのか

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フリーも例外ではない。エージェント機能の発表以降、時価総額は大幅に下落しており、回復の兆しは見えていない。それだけ投資家がAIエージェントの台頭をSaaSビジネス全体への構造的な脅威として受け止めている証左ともいえる。

フリーの時価総額グラフ
(出所)四季報オンラインのデータを基に筆者作成

横路氏は、SaaSの価値シフトそのものは「もう確かなこと」と認めつつ、消滅論には距離を置く。

「AIエージェントで機能を作ること自体は簡単で、誰でもできる。しかしシステム開発後も、会計や税制の制度変更に合わせた運用メンテナンスが必要になる。(フリーの主な利用者である)中小企業や個人事業主が本業をこなしながらそれをこなすより、SaaSを利用するほうが合理的ではないか」

株価下落については「SaaSは最初に多額の投資をして、利用者を増やしながら徐々に回収するというビジネスモデルだ。数年後にAIの進化で何が起きているかわからないという不安を、市場が織り込んでいるのだと思う」と分析する。

さらに「日本ではまだソフトウェアセクター全体の下落が連動しているが、北米ではAI時代に生き残るSaaSの選別が投資家の間で始まっている」とも語り、国内外の温度差を指摘した。

API連携への先行投資が花開く

競合に先駆けてAIエージェント機能を搭載できた背景には、フリー自身の設計思想がある。同社はかねて、クレジットカードや銀行口座との自動連携、基幹システムとのAPI連携に注力してきた。その積み重ねが今、真価を発揮しようとしている。

「AIエージェントによって非定型業務も含めて自動化できるようになった。我々がもともと実現したかった体験を、AI時代にまさに実現できる」(横路氏)

足元の業績は堅調だ。25年6月期の連結決算では当期純利益が13億7000万円となり、創業以来初の黒字を達成。有料法人契約は増加が続いており、26年6月期も増収を見込む。株価は下落しているものの、事業の実態は着実に積み上がっている。

フリーの業績推移

皮肉なのは、「SaaSの死」の引き金を引いたとされるAIの進化が、フリーにとっては追い風でもある点だ。AIエージェントが高度化するほど、信頼性の高いデータ基盤の価値は増す。フリーが長年構築してきたのは、まさにそうした基盤にほかならない。

フリーがAIエージェント時代にいち早く動き、国内SaaS業界に風穴を開けたのは間違いない。その後、ライバルのマネーフォワードも続き、AIエージェントに指示を出せば経理業務を実行する同様のサービスを開始した。SNSで火がついた熱狂を、サービスの本格普及と中長期の業績へと結び付けられるか。「SaaSの死」論争の震源地に立つフリーの真価が、今まさに問われている。

松田 晋吾 フリーライター

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まつだ しんご / Shingo Matsuda

福岡市出身。全国紙記者として、経済を中心に、行政や事件・事故、スポーツ、地元の話題など幅広いテーマで取材。Big4に転職後はコンサルタントとして、M&Aや事業再生、上場支援等のプロジェクトに関与した。2026年にフリーライターとして独立。

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