この頃を境に、彼女は自分の意思で、ここに居続けることを選ぶようになっていたのである。
大きかったのは、苦楽をともにしてきた仲間の存在だった。
財布にお金がない日々も、うまくいかない月も、同じ場所で過ごしてきた。説明会が成功すれば一緒に喜び、失敗すれば励まし合う。
その時間は、単なるビジネスの枠を超えていた。もう一度、青春をやり直しているような感覚でもあったという。
そしてもうひとつ。遠藤さんは、こう語る。
「会社員だけの生活に戻って、小さくなっていたいと何度も思いました。でも、それだと『心が死ぬだろう』っていうのは、すごくわかっていたんです」
朝から晩まで働き、与えられた業務を我慢しながらこなすだけの日々。あの日常に戻ることのほうが、よほど怖かった。
気づかないうちに、遠藤さんの中で活動を続ける理由は変わっていた。
それはもはや「起業して稼ぐこと」ではなく、「この居場所を守り続けること」だったのである。
だが、その「居場所」とは、いったい何だったのか。
東京で一緒に過ごせる仲間がほしかった
遠藤さんは上京当時、友人も家族も、頼れる人はひとりもいなかった。それは、何か自分から動かなければ、この巨大な都市で簡単に孤立してしまうことを意味していた。
最初は、異業種交流会や国際イベントなど、さまざまな交流会にも足を運んだという。
「その場は盛り上がるんです。でも、終わったらもうつながらない。生涯の友人になる感じではなかったですね」
都会の人間関係は、思っていた以上に軽かった。
そんな中で出会ったのが、この団体だった。
毎週末に顔を合わせ、平日の夜も語り合う。成功すれば一緒に喜び、失敗すれば励まし合う。同じ目標を掲げ、同じ言葉を共有する。
「仕事以外に目標が一致する仲間って、本当に部活みたいな連帯感があるんですよね」
そして当時を振り返り、遠藤さんは正直な胸の内を明かす。
「東京で一緒に遊べる仲間が欲しかったんだと思います」
今となっては、遠藤さんが最初から求めていたのは、「起業してお金を稼ぐこと」そのものではなかったのかもしれない。
次ページが続きます:
【心地よい居場所が崩れはじめる】
