「この団体について検索すれば悪いことも出てくる。でも、それを信じるかどうかはあなた次第だよ」
入会前から繰り返しそう言われていたことで、実際に否定的な情報を目にしても、「ああ、これのことだ」と受け止める準備ができてしまっていた。
「検索したこともあります。でも、“あ、これね”って思っただけでした」
疑問が芽生えても、それは“検討すべきサイン”ではなく、“外野のノイズ”として処理されていた。
そして何より効いていたのが、小さな目標の積み重ねだった。
「今月は誰を説明会に連れてくるとか、何人に会うとか。小さい目標がたくさんあったんです」
ひとつクリアするたびに、「ちゃんと進んでいる」という感覚が得られる。
「“できた”って思える瞬間はあるんですよね。だから、もう少し頑張れば、いけるかもしれないって」
大きな成功は遠くても、小さな達成は手の届くところにある。その積み重ねが、「今辞めるのは早いのではないか」という判断を、静かに先送りさせ続けていた。
次第に団体への不信感がつのりはじめる
一見すると、巧妙に設計された洗脳の仕組みにも見える。
だが、不幸中の幸いというべきか、この団体の構造は、人を完全に縛り続けられるほど精巧なものではなかった。
時間が経つにつれ、団体の内側にある矛盾やほころびが、少しずつ遠藤さんの目にも見え始めていった。
活動を始めて3年を過ぎた頃、遠藤さんの中では団体への不信感が次第に大きくなっていた。
実際、同じような違和感を抱いたメンバーの中には、逃げるように姿を消す人もいたという。
「正直な話、もう学ぶものは学び切った感覚もありました」
それでも、遠藤さんは辞めなかった。
次ページが続きます:
【会社員だけの生活に戻ったら心が死ぬ】
