遠藤さんには、薬剤師という資格があった。
アルバイトでも比較的高い収入を得ることができたため、借金が致命的な額に膨らむ前に、なんとか返済を回すことができてしまったのである。
皮肉なことに、それは、活動を6年続けられる要因にもなっていた。
3年目、ようやく月11万円の収入を得られるようになった。それが、彼女の最高月収だった。月15万円の受講費にも届かない金額である。
「もっと早く、もっと大きく稼げるようになると思っていました」
活動期間中、収支が黒字になることは一度もなかった。
借金まで抱え、辞めたいと思ったことも、一度や二度ではない。それでも、遠藤さんは団体を離れなかった。
辞めさせなかった「洗脳の仕組み」
すでに投じた時間や資金が大きいほど、「ここで辞めたら、すべてが無駄になる」という心理が働くのは自然なことだ。
だが、それに加えて、団体側には退会を困難にさせる構造が組まれていた。客観的にみればこれは「洗脳」と呼ばれる仕組みだ。
最初に効いていたのは、徹底的な“忙しさ”だった。
平日は仕事を終えてから人に会い、週末は朝から夜まで講座。説明会の準備と振り返り、次の目標設定。予定は常に埋まっていた。
「本当に毎日、何かしら予定が入っていました。考える時間がなかった、というのが正直なところです」
立ち止まって「私は何をしているのか」と問い直す余白が、少しずつ削られていく。疲れていると、人は深く考えるよりも、“流れに乗る”ほうを選びやすくなる。
「忙しいから疑問があっても、まあ今はいいか、となってしまうんです」
さらに、会う相手は同じコミュニティの仲間が中心になる。外部の情報に触れる時間は減り、カナダ留学で広がったと思った世界は、少しずつ狭まっていった。
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【一見、巧妙に仕組まれた洗脳の仕組み】
