アップル創業50年の本質は何か、ジョブズが示した「疑念の階層」とAI時代に貫く"責任あるものづくり"の思想
ジョブズは、もはや「選択と集中」の議論をしていたのでは遅いと考え、「ゼロからの再始動」をする道を選ぶ。製品の開発と製造を一度すべて止め、商品数ゼロからの再出発を宣言した。
同時に当時CompaqにいたティムクックをCOOとして引き入れ、稼働率の低い工場の利用廃止、倉庫に眠る流通在庫の一括廃棄処分、そして需要を的確に予測しほとんど在庫を持たずに製品を売り切る新モデルへの転換を断行した。
この経営改革で、経営権奪還最初の四半期こそ赤字だったが、二期目からは黒字化し、その後も連続黒字を達成してみせた。
1製品から4つのカテゴリーへ
確かに事業基盤は安定したが、それでも魅力的な製品がなければ会社として社会的価値を持つことができない。第3層の疑念は「製品戦略」だ。
アップルの製品戦略はゼロから再出発だったが、最初に出した製品の魅力は小さかったが極めて製品そのものも、売り方も理にかなっていた。
この当時、Macを使ってビデオ編集や写真加工をするプロがPowerPC G3という高速プロセッサを搭載したモデルを欲していたので、出せば売れることはわかっていた。
タワー型と平置き型の2種類の本体形状があるとはいえ(正確にはもう1つ教育市場向けに画面一体型もあった)、このたった1製品であらゆるニーズを満たそうとするとかなり大変だ。
そこでジョブズは新機種と同時に、搭載メモリーやディスク容量などをカスタマイズして製品を注文できるオンラインストア、「Apple Store」を同時発表する(アップル初の直販事業)。
たった1種類の製品だが、購入時にカスタマイズすることで、膨大な構成のバリエーションを実現し、顧客のニーズにきめ細やかに応えたのだ。実はこれこそがティム・クックのアップルでの初の大仕事だ。
同時に販売店経由での流通も改革した。当時多くのコンピューター専門店の片隅の一角で売られていたが、主力チェーンのCompUSAと、店の中央にアップル専用の什器を据え、アップルが派遣した専任販売員を配置するストア・イン・ストア戦略を展開する契約を結んだ。



















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