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なぜDXを進める組織ほど「トラブルが起きると誰も判断できない」のか。学習する組織の構築に不可欠な「セオリー」とは何か

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トラブル対応に悩む社員
DXで業務の効率化が進んでいるのに、なぜ不測の事態に直面したときの組織力が弱まっているのか(写真:metamorworks/PIXTA)
  • 原田 勉 神戸大学大学院経営学研究科教授
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DXによって業務は効率化されても、セオリーは再構築されていない。むしろ、暗黙のセオリーがデータに置き換えられる過程で失われている場合すらある。

ストーリーよりセオリー

では、セオリーはどのように形成されるのか。ここで重要なのがリーダーの役割である。リーダーシップとは、抽象的なカリスマ性ではない。

セオリーを組織に持ち込み、それを浸透させる能力である。

この点を象徴的に示すのが、清宮克幸氏の実践である。彼は早稲田大学ラグビー部を再建し、日本一へと導いた。その際に彼が行ったことは明確である。戦術を教えたのではない。「考え方」を教えたのである。つまり、

・なぜそのプレーを選択するのか

・なぜその判断が正しいのか

というセオリーを、徹底的に共有したのである。だから選手は、自ら判断し、状況が変わっても対応できる。

チームが強くなるのは、才能があるからではない。

セオリーが共有されているからである。

経営においては、「戦略はストーリーである」と言われることが多い。確かに、仮説としてのストーリーは重要である。

しかし現実には、ストーリーどおりに進むことはほとんどない。プランAが失敗し、プランBやCに移行するのは日常茶飯事である。ここで問われるのは、ストーリーの巧みさではない。どのような状況でも意思決定を支えるセオリーがあるかどうかである。

ラグビーの試合においても同様だ。どれほど優れたゲームプランがあっても、現場では想定外の状況が連続する。そのとき機能するのは、ストーリーではなくセオリーである。

・ストーリーの前にセオリーがある。
・ストーリーはセオリーの上にしか成立しない。

変化の激しい時代において、企業は何をすべきか。問うべきは、「何を変えるか」ではない。

「何を変えてはならないか」である。

変化に適応するために必要なのは、変化そのものではなく、「変わらない基盤」への確信である。その基盤こそが、セオリーである。

DX、AI、人材流動化――。時代は急速に変化している。しかし、どれほど環境が変わろうとも、組織や個人が拠って立つべきものは変わらない。それがセオリーである。

セオリーなき効率化は、空洞化である。セオリーなき戦略は、ただの物語である。そして、

セオリーのない企業や個人は、必ず滅ぶ。

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