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キャリア・教育 #学校という身近な”異世界”の物語「知られざる教員のリアル」

教員が「雨漏りやトイレのドア修理、ペンキ塗り替え…さらには"隠しカメラ探し"」も、マルチタスクすぎる学校の異常事態

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中学校の教室
教員の労働力で何でも解決しようとする学校の現状とは…(写真:mits / PIXTA)
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「隠しカメラがどこにあるかなんて、素人の私が探せるわけないじゃないですか。それなのに、学級文庫の本の間やテレビの裏、さらには黒板の上の掲示物の裏まで探せと言われる。毎日はしごによじ登って確認しろということです」

昨今、教員による児童生徒への盗撮やわいせつ行為が相次いでいることを受けて、文科省は「教員による児童生徒性暴力等防止法」の運用を定めた指針の改定案を公表している。

その中で教室やトイレ、更衣室などの点検をしてカメラを設置できない環境にすることを求めているのだが、高田さんが毎日やっている「隠しカメラの点検業務」はこれを受けたものだろう。どこかで不祥事が起きれば、その都度、全国の学校現場で対応が求められるのだ。

ほかにも、かつて高田さんが小学校に勤務していた際は、校庭のすべてのブランコに乗って強度を確認し、一輪車のタイヤを一つずつ手で触ってパンクをチェックしていたという。

施設管理の専門知識がない教員が、「もし事故が起きたら自分の責任になる」という恐怖を抱えながら、点検作業にまで忙殺されているのが現状なのだ。

検証なき「ビルド・アンド・ビルド」の果てに

なぜ、これほどまでに現場は疲弊しているのか。高田さんは、文部科学省の姿勢を強く批判する。

「文科省は新しい制度を次々と導入しますが、一度始めたことが本当に効果があったのかを検証し、不要なものを廃止することが一切ありません。例えば、『総合的な学習の時間』は、現場が『やめてもよいのでは』と声を上げても、教育的価値をデータで検証することなく継続されています。つまり『スクラップ・アンド・ビルド』ではなく、『ビルド・アンド・ビルド』の状態なのです」

近年、この傾向はますます強まっていると高田さんは憤る。

「防災教育、金融教育、インクルーシブ教育、外国語教育、ICT教育、そして道徳の教科化。これらを全部やっているんです。やれるわけないですよ。道徳を教科として導入して、子どもたちの心がどう変わったのか、誰か教えてほしいです」

そして高田さんが最も大きな絶望を感じているのは、これほどの激務にありながら、国が教員の労働を「正当な残業」として認めていないことだ。

いわゆる給特法(公立の義務教育諸学校等の教育職員の給与等に関する特別措置法)に基づき、教員には残業代が出ない代わりに基本給の4%にあたる「教職調整額」が支給されており、2025年6月に成立した改正案ではこれを段階的に引き上げて最終的に10%とする方針が決まった。しかし、高田さんはこの制度こそが諸悪の根源だと指摘する。

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【「娘には絶対に教員になってほしくない」】

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