【医師が注意喚起】麻疹が感染拡大「妊活前にワクチン」の切実な理由…発症者が去っても感染力は持続、新生児は高リスク

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感染者がその場を離れたあとでも、ウイルスは最大で約2時間、空中に滞留し、感染性を保つとされる。さらに、1人の感染者が平均して12~18人に感染させるとされ、基本再生産数(R₀)はインフルエンザの約10~12倍に相当するほど、極めて高い。

こうした特性から、わずかな「免疫ギャップ(既感染、あるいは2回以上のワクチン接種により、十分な免疫を獲得していない状態)」が存在するだけでも、集団内で急速に感染が拡大し、流行に至るリスクが高い。

麻疹の予防とワクチン

したがって、麻疹の予防には高いワクチン接種率の維持が不可欠となる。

麻疹対策で最も重視すべきは、0歳児である。

日本では、麻疹ワクチンの初回接種は1歳以降とされているが、母体から移行する免疫は、生後3~6カ月で急速に低下する。このため、生後早期から1歳までは自ら免疫を持たない、いわば無防備な状態に置かれる。

近年の研究は、この免疫ギャップが従来の想定以上に深刻であることを示している。カナダ・ウェスタンオンタリオ大学を中心とした研究チームが2019年に『小児科』誌に発表した研究では、生後3カ月の時点で約9割の乳児が、すでに防御できるレベルの免疫を有していなかった。

免疫を持たない者が麻疹ウイルスにさらされれば高率に感染し、しばしば合併症を伴い、後遺症を残すこともある。とりわけ乳児は重症化リスクが高く、何としても守らなければならない。

この課題に対し、早期乳児期のワクチン接種の是非が議論されている。

トロント大学などの研究チームが2019年に『アメリカ医師会誌小児科版』に報告した研究では、早期のワクチン接種は短期的には十分な免疫をつくる一方、その後は通常スケジュールと比べて早期に免疫が低下する可能性が示された。

すなわち、流行時の緊急的な防御手段としては有効であるものの、長期的な免疫維持という観点では課題が残る。

このため、早期接種を標準戦略とするかどうかについては、追加接種を含めた最適なスケジュールの検証が不可欠であり、現時点では国際的なコンセンサスには至っていない。

親世代へのワクチン接種が急務

早期摂取が認められていない今、取り組むべきは“親世代へのワクチン接種”である。

日本における免疫ギャップは、過去の接種制度の変遷に由来する。1972年10月から2000年4月生まれ(現在おおむね25〜53歳)の世代は、制度上1回の接種を基本としていて、現在の2回接種とは異なる。それ故、免疫が不十分である可能性が高い。

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