「破壊的なかわいさ」「いとおしすぎる」と話題の《小ザル・パンチくん》 爆発的人気を生んだ"敏腕課長の半生"

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目指したのは、ホームレスの自立を支援する包括的な取り組み。身元保証人不要のアパートを市川市が借り上げて、住居を提供する。住居が定まれば生活保護など公的支援の対象としやすくなり、行政のケースワーカーとつなげることができる。さらに、地元の自立支援団体と連携し、地域社会に馴染めるような生活のサポートも行う。

当時、日本全国を見渡してもここまでの支援策を打ち出しているところは珍しく、市長、市議会議員、市役所内の関連部署、上司など大勢の人たちとの調整が求められた。

そこで方々に気を配り、うまく調整して……という立ち回りができる性格ではなかった。難色を示す人には「ホームレスがいない世の中にすることが必要でしょう!」とド直球の正論を投げ込み、あちこちで摩擦を起こした。

しかし、熱意を持って理想を訴える若い職員は稀有な存在でもある。そのうちに理解者が少しずつ増えていき、2003年、ついに安永さんの案を全面的に盛り込んだ「市川市ホームレス自立支援実施計画」が成立した。

「いろんなところで、生意気な若造がいるなって思われていたはずです。でも、確かに支援が必要だよなとわかってもらって。本当になにもなかったところから始めたので、市長にも認められて約1300万円の予算をつけてもらったときは本当に嬉しかったですね」

この取り組みは高く評価され、2004年、市川市は「WHO健康都市賞」を授与された。その功労者として、職員表彰を受けた。

「支援がうまくいかなかった方もいて、政策って必ずしも万能じゃないということは感じました。それでも、地域社会に溶け込んで、その人なりの生活を送ることができるようになった人が何十人もいて、今でも町なかで顔を合わせると、『安永さん!』って声をかけてくれるんです。こんなに面白い仕事はないと思いましたし、住民の幸せに貢献する仕事ができたことは今でも誇りですね」

農家の後継者不足問題解決にも奔走

8年間、福祉事務所で勤めた安永さんは、その後につながる大きな学びを得た。それは、課題を特定すること。課題に対して想像力を働かせ、先例に囚われず、手を尽くすこと。そうすれば、人が動く。

2007年、経済部の農業振興課に異動後も、同じようにアプローチした。市内の農家の課題は、後継者不足。そこで、あの手この手を尽くして市内の農業従事者の後継者が集う組織(4Hクラブ)を盛り上げ、会員数を増やした。これが認められ、2012年、2度目の職員表彰を受賞している。

2013年からの4年間は、市内の開発を担うまち街づくり部に配属された。「市川市をどういう街にしていったらいいか」という議論のなかで、安永さんが感じた一番の課題は、「住民の市川市に対する関心の薄さ」だ。

「市川市の住民って、昼間は東京に働きに行って夜に帰ってきて寝るだけ、週末の買い物も船橋のららぽーとや都内に行くという生活パターンが多いんです。だから地元への関心が薄いんですけど、私は『市川って魅力的なまちだな』『市川市に住んでよかった』と思ってもらいたい。それから地元への関心、愛着、誇り、つまりシビックプライドを育むにはどうしたらいいのかということを意識するようになりました」

2017年に管理職に昇進して初めてのミッションは、商店街の活性化。安永さんは、「シビックプライドの育成」というより大きなテーマに真正面から取り組む。

市内には約50の商店会があり、どこも来街者の減少に悩まされていた。そこで「ネット通販や大型店には太刀打ちできないと受け入れるところから始めよう」と呼びかけ、人の魅力にフォーカスした「店主の顔が見える商店会」を提案。そのための知恵を出し、新たな補助金を用意して、何度もイベントを打った。休日でもボランティアで応援に駆け付けた。

その過程で市内に個人経営のおいしい飲食店がたくさんあることに気づき、2019年、「市川市の美味しいもの(@ichikawa_oishii)」というツイッター(現X)の個人アカウントを開設。プライベートで食べ歩いたうえで店主にも取材して投稿を始めた。2026年3月時点で掲載店舗は500店にのぼる。どう工夫をしたら多くの人に届くか試行錯誤を重ね、地道にフォロワーを増やしてきた。

「ガッツリ店主と向かい合って、なにが魅力なんだろうということをできるだけ深掘りしています。インスタグラム(@yasunaga_ichikawa)のリール動画も時間をかけて編集をして発信するので、そんなに頻繁には投稿できないんですけどね。閲覧数はけっこう多くて、Xのフォロワーは5000人、インスタは最近のパンチ効果で1万2000人を超えました」

安永さん
安永さんのXアカウント(写真:筆者撮影)
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