池袋ストーカー刺殺事件の深層 「タイプ別」で見極める凶行の予兆と、現状の警察対応が抱える限界

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このような悲惨なストーカー事件が起きるたびに、私が繰り返し主張していることは、従来の接見禁止命令や短期間の逮捕・勾留という「抑止的方法」には限界があるということである。

もちろん、大多数の「軽微な」ストーカーにはこれでも十分に効果がある。しかし、今回のような暴力的で危険なストーカーには効果が見込めない。

本事例では、警察も丁寧にできる限りの対応をしていたようである。しかし、それでも事件を防げなかったことを考えると、制度や対策を抜本的に変える必要がある。

まずは、危険なストーカーをあぶり出すことである。そのためには、専門家が標準化されたリスク評価ツールを用いて加害者のリスクを評価することが重要である。その評価においては、先に述べた危険なストーカーのリスクファクターや本人のパーソナリティなどの評価が中心となる。

次に、そうしてあぶり出された「高リスクストーカー」に対して、専門的な治療を行うことである。現在の法制度では、せいぜい警察が加害者に対してカウンセリングに行くよう勧めることしかできない。しかし、実際にカウンセリングを受ける者はほとんどいない。

しかも、認知のゆがみや愛着の問題などを変えるには、年単位の治療が必要であり、費用も高額になる。

ストーカー全員に治療を行う必要はない

だとすれば、このような治療をある程度の強制力を持って、そして費用は税金で負担してでも実施するべきである。何もストーカー全員に治療を行う必要はない。「高リスクストーカー」に的を絞って治療をすればよいのであるから、さほど膨大な費用負担になるわけではない。

この場合、認知行動療法と呼ばれる治療が中心になり、これはゆがんだ認知や行動パターンを修正する治療であるが、確実な効果のエビデンスが集積されている。

毎年のように、ストーカー殺人事件の犠牲になる人が後を絶たない。警察への相談件数も増加の一途をたどっている。このような状況を放置しておいてよいはずがない。あと何人犠牲になれば、国や法執行当局は重い腰を上げるのだろうか。

原田 隆之 筑波大学教授

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はらだ たかゆき / Takayuki Harada

1964年生まれ。一橋大学大学院博士後期課程中退、カリフォルニア州立大学ロサンゼルス校大学院修士課程修了。法務省法務専門官、国連Associate Expert等を歴任。筑波大学教授。保健学博士(東京大学)。東京大学大学院医学系研究科客員研究員。主たる研究領域は、犯罪心理学、認知行動療法とエビデンスに基づいた心理臨床である。テーマとしては、犯罪・非行、依存症、性犯罪等に対する実証的研究を行っている

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