「寄生虫は検出されず」「国家食品安全基準にも適合」… 中国スシローで起きた《マグロ異物騒動》の顛末

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中国に進出する日系寿司店の多くは、単なる「食事の場」にとどまらず、「食べながら遊ぶ」体験を取り入れた独自のマーケティングを展開している。中でもスシローは、中国メディアやネットユーザーから、飲食業界の「ディズニー」とも称される存在である。

北京に住むある若者はこう語る。「スシローの新店舗の出店が相次ぎ、予約なしでは数時間待ちも珍しくない。その人気を支えているのは、大型スクリーンによる注文システムや、抽選などのゲーム性を取り入れた体験型サービス、さらにSNSで拡散されやすい仕掛けだ」。

いわば「ネットで話題の店」として若者の関心を集め、来店へとつなげているのである。行列そのものが「人気店」の象徴として機能し、話題性を高める。こうした多層的な仕掛けこそが、スシローの持続的な人気を支えている。

食事体験の“エンタメ化”も好評のようだ。一定数の皿で抽選に参加できる仕組みや、アニメ関連グッズなどの景品が、食事に遊びの要素を加えている。

また、店内の視覚設計もSNSで拡散されやすい。回転レーンの動きや積み上げられた皿、明るく清潔感のある空間は写真映えしやすく、小紅書や抖音(中国版TikTok)といったSNS上で広く共有される。

価格帯も庶民にとってリーズナブルだ。従来、中国における日本料理は「高級」というイメージが強かった。しかしスシローは、10〜20元(約230〜460円)程度の低価格商品を打ち出し、そのハードルを下げた。これにより若者を中心に新たな客層を取り込み、寿司は「特別な食事」から「日常の選択肢」へと変わった。

高い人気を獲得してきたが…

低価格、ゲーム性、SNS拡散、ブランド運営といった複数の要素を組み合わせて、これまでスシローは中国で着実にファン層を広げてきた。同社が提供しているのは単なる寿司ではなく、娯楽性と社交性を備えた「上質な体験」だと言える。

そんな中で起きた今回の異物騒動。最終的に当局の検査で疑惑は否定されたものの、日系企業に教訓を残した。それは、SNS拡散の即時性は、動画ひとつで株価や積み上げてきた人気を急落させるということだ。

もちろん、日本でも数年前に客の迷惑行為がSNSで拡散されて注目を集めたことが記憶に新しいが、特に中国では、SNSの拡散力が極めて強く、単一の動画や投稿が世論を一気に形成する特徴があるので注意が必要だ。

企業は日常的な食品の安全・衛生管理を一層重視し、顧客からの苦情には迅速に対応する必要がある。デジタルリスク時代の中国市場では、初動の広報対応と現地当局との連携が事業継続のカギとなる。

黄 文葦 ジャーナリスト

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こう ぶんい / Kou Buni

日本と中国、日本語と中国語を愛する在日中国人フリージャーナリスト。学校法人白萩学園名誉理事。中国の大学と日本の大学院でマスコミを専攻、日中両国のマスコミの現場を経験。2000年来日以降、日本語と中国語で教育、社会、文化の問題に焦点を当てたコラムを執筆し、両国の「真実」を相手国に伝えることを模索している。19年に電子書籍「日中文談: 在日中国人の日本観(エッセイ)」を出版。20年8月から23年7月までの3年間、日中文化比較のメルマガ「黄文葦の日中楽話」を発行。24年10月、「新中国語から中国の『真実』を見る」(風人社)を出版。

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