社会的地位あっても不正に手を染めてしまう…「ホワイトカラー犯罪」なぜ起こる?4つの抜本的対策
3. 事務用機器販売会社の事例
事務用機器販売会社の元従業員らが、移籍先の代表取締役社長と共謀して移籍元の顧客情報を不正に領得したとして問われた刑事事件。
結論は故意や共謀を示す証拠がなく「無罪」となったが、対象となった顧客情報の秘密管理体制については認定されていた。
<評価された秘密管理体制>
厳格な多要素認証:顧客情報を集約したアプリケーションにアクセスするためには、IDとパスワードに加えて、さらに「ワンタイムパスワード」を入力する必要があった。
システム上での明確な注意喚起とログ取得:顧客情報の画面上部には「この画面に記載の情報は、不正競争防止法上の営業秘密に該当します」という注意文言が明確に表示されており、誰が見ても秘密情報であることがわかる状態であった。さらに、閲覧履歴(ログ)も記録される仕組みになっていた。
秘密管理性が棄却された判例
次に、紹介するのは秘密管理性が棄却された判例だ。
1. ハウスメーカーの顧客情報の事例
<棄却された原因>
不十分なアクセス管理: 顧客情報が基幹業務システムに登録されていたが、1700人前後という非常に多数の従業員が、IDとパスワードだけでほぼ自由にアクセス可能な状態に置かれていた。
さらに、社用パソコンだけでなく、従業員の私用のスマートフォンなどからもアクセスが極めて容易であった。
本件は就業規則に一般的な秘密保持の規定があったが、裁判所はそれだけでは、秘密管理措置がとられていたとは認められないと判断した。
2. 歯科医院のカルテおよび全患者リスト等の事例
<棄却された原因>
秘密管理性立証不足: 退職した歯科医師によるカルテや患者リストの持ち出しが争われた。
しかし、裁判所は「原告(歯科医院側)は、不正競争防止法に規定する『営業秘密』の3要件(秘密管理性を含む)に係る具体的な主張立証をしておらず、少なくとも原告主張に係るカルテ等の資料が営業秘密に該当すると認めるに足りない」として、要件の証明不足を理由に該当性を否定した。
本件で原告側は個人情報保護法違反であると訴えたが、それらに対して秘密管理性を満たす管理ができていなかったという理由で、原告の主張は認められなかった。
3. 建築部材の製品・取引・原価情報の事例
<棄却された原因>
秘密の明示欠如と広範なアクセス:設計図や原価情報などのデータが社内サーバに格納されていたが、円滑な業務遂行を優先してパスワードが付されておらず、データに「部外秘」や「秘密情報である」といった付記も一切なかった。
また、パソコンを貸与された者のみアクセスできる状態であったが、その中には業務上これらの情報をまったく必要としない者も含まれていた。さらに、就業規則の秘密保持対象に該当のデータが含まれることが明示されていなかった点も原因とされた。
4. 熱分解装置の関連情報の事例
<棄却された原因>
秘密管理性立証不足と外部提供時の証跡不備:装置の製作費用の見積りを外部企業に依頼する際に提供した情報などが争われた。
しかし、情報を提供する際に、相手方との間で情報の漏洩や第三者への提供を禁じる秘密保持契約等の合意をしたという客観的な証拠がなく、また、自社内において当該情報を営業秘密として管理していた事実を認める的確な証拠も存在しなかったため、秘密管理性が否定された。
5. 電子基板の顧客情報および設計データの事例
<棄却された原因>
情報の未整理、認識の不共有:顧客情報を含む社内の情報が目録などの形で整理されておらず、どのような情報が存在するのか社内で認識が共有されていなかった。
設計データについては、社内サーバに保存されていたが「秘密」等の外形的な表示がなく、ログインさえすれば自分の担当外の無関係なデータにもアクセスできる状態であった。
さらに、業務のために私物のパソコンにデータを移して作業することや社外への持ち出しが容認・放置されており、情報の持ち出し状況も管理されていなかったことが致命的とされた。
本件では、就業規則内で守秘義務規定が明記されており、顧客との間では秘密保持契約を結んでいたが、社内での秘密管理措置が講じられていないと判断された。





















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