「間違った地図」でなぜ部隊は生還できたのか? 正論より"物語"がリーダーに必要な決定的な理由

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聞き手は実際に体験したことではないのに、脳の反応は物事を自分で体験するときと同じように行われます。さらに、相手のストーリーへの共感が高まるにつれて、脳内には信頼のホルモンと称されるオキシトシンが分泌されます。優れたストーリーを語ることが、聞き手からの共感と信頼を高め、心理的なつながりを築いてくれるのです。

また、人間の脳には「空いている空白を埋めたがる性質」があります。すべてを伝えなくとも、間に起こるであろう出来事を人は脳内で勝手につくりあげてしまうのです。一説では、文豪ヘミングウェイが書いたとされる「たった6単語の小説」の逸話があります。

「物語」ではなく「物語り」へ

紙ナプキンに書かれた言葉は、「Forsale:baby shoes never worn.(売ります。赤ん坊の靴。未使用)」でした。この文章を読んだとき、私たちの脳内には、わが子が元気で生まれてくる日を指折り数える幸福な日々、そして突然襲った赤ちゃんの死という悲劇が鮮やかに展開されます。

リーダーのためのストーリーテリング入門 90秒で人の心を動かす「語り」のマネジメントスキル
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英語の一文には赤ちゃんの死については何ひとつ書いてありませんが、そこに意味を与えて虚構のイメージをつくりあげてしまうのは私たち自身なのです。語られていない空白の部分を自ら埋めて見出した意味は、自分の考え、そして意志に変換されていきます。自分で答えを見出すこと、これは本当の意味で人を突き動かす原動力です。

リーダーが語るストーリーは、すでに出来上がった過去の「物語」ではありません。それは、自他を実践に向けて巻き込み、新たな可能性に向けた行為を生み出すための「物語り」であるといえます。

リーダーはストーリーを語り終えたとき、「ご静聴ありがとうございました」で終わってはいけません。語り手と聞き手の相互作用によって新しい行為が生まれ、物語が成就するのであれば、話し手はストーリーを語り終えたときに、呼びかけとともに、聞き手を対話にいざなっていく必要があるのです。

第1回では、ストーリーテリングの有効性とセンスメイキングの重要性、そして脳や心理に与える影響について解説しました。第2回では、リーダーが職場で語るべき「7つのタイプ」について具体的に紹介していきます。

広江 朋紀 リンクソシュール ファシリテーター

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ひろえ とものり / Tomonori HIROE

企業の組織開発・人材開発を支援するリンクアンドモチベーショングループのファシリテーターとして、採用、育成、風土改革に20年以上従事。上場企業を中心に1万5000時間を超える研修やワークショップの登壇実績。近年は、マネジメント層を対象とした心理的安全性、エンゲージメント強化に向けたトレーニングや対話セッションの場を多く持つ。著書に『マネジメントに役立つ 心理的安全性がよくわかる本』ほか多数。

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