日本でも人気高まる韓国の詩人・尹東柱、訳詩集にくすぶる「4文字」の誤訳論争

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伊吹訳は次のようになっている。

序詩
死ぬ日まで空を仰ぎ
一点の恥辱(はじ)なきことを、
葉あいにそよぐ風にも
わたしは心痛んだ。
星をうたう心で
生きとし生けるものをいとおしまねば
そしてわたしに与えられた道を
歩みゆかねば。
今宵も星が風にふきさらされる。

池田大作と茨木のり子の激賞

この伊吹訳を評価したのは、意外にも創価学会の池田大作だった。彼は1990年に行った講演の中で、尹東柱を紹介している。自身の戦争体験に触れながら「日本に勉学に来た学生を、大切にするどころか、非情にも逮捕し、獄死、まことに狂気の行為といわざるをえない」(池田大作全集75巻)と憤慨し、会場で伊吹訳の序詩全文を紹介した。

1942年8月4日、立教大学在学中の夏休みに帰省した際に撮られた尹東柱(写真:立教大学ホームページ)

これで売れ行きに弾みがついたが、伊吹訳の知名度向上の決定的なきっかけを作ったのは、詩人の茨木のり子の激賞だった。

彼女は自らもハングルを学び、尹東柱の詩の翻訳に取り組んでいたが、伊吹訳を目にし「見事な訳と研究には完全に脱帽」(『ハングルへの旅』朝日文庫)と評価した。この文章がきっかけになり、尹東柱の序詩は、伊吹訳で高校の国語教科書(筑摩書房)に採用され、今日まで約80万部発行されている。教科書でこの詩を目にした人も多いはずだ。

1995年には尹東柱が立教から転学して通っていた同志社大学(京都)の構内に、記念碑が設置され。伊吹訳の「序詩」が刻まれた。しかし、訳が有名になるにしたがって、皮肉にも批判が起きてきた。

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