AI時代の小学校英語《何を手放し、何を残すか》再考が必要、「得意な子どもと苦手な子どもに開き」指導者に負担感

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しかし、ここで改めて考えたいのは、聞くという行為そのものの意味です。聞くことは単に音声を受け取るだけの活動ではありません。相手の言葉を受け止め、意味を考えながら聞くことで、次の言葉を生み出します。

聞くことを丁寧にデザインすることは、話す前の小さな自信を育てることにもつながります。聞いてきた言葉が少しずつ体に蓄積されることで、子どもは自分の言葉で話せる感覚を持ち始めます。

またAIができないことがあります。それは、言葉の先にいる人を感じながら話すことです。相手の反応を受けて言い換えたり、うまく伝わらないと感じて言い直したりする経験は、人と人が関わる学びの中で生まれます。

ある授業では、発表の後に聞き手がOne Word Title(一語タイトル)を付ける活動を取り入れました。発表を聞いて、その内容を一語で表します。難しい英語は必要ありませんが、話の核をつかまなければタイトルは付けられません。

すると聞き手の意識が変わります。「どんな話なのだろう」と耳を傾けるようになります。聞き手だけではなく、話し手も「どんなタイトルが付くのだろう」と意識し、本当に伝えたいことを絞り始めます。

聞き手を意識すると、発表の仕方にも変化が生まれます。途中で好き嫌いを尋ねたり、クイズ形式にしたりして、聞き手を巻き込もうとする工夫が出てくるのです。

ここで重要なのは、発表を上手に見せることそのものではありません。聞き手の反応を受けて、言葉が少しずつ形を変えていくことです。発表のあとに「さっきよりわかりやすくなったね」と声をかけると、子どもの表情が変わります。英語ができたという自信だけではありません。

言葉の向こう側にいる相手とつながれたという感覚が残るからです。子ども同士が反応し合い、言い直し、笑い合い、ときに戸惑う。そうした経験の中で、言葉は少しずつ育っていきます。

何を手放し、何を残すのか

AI時代の小学校英語は、「量だけで測る英語」から「やり取りのある英語」へと軸を移す必要があります。AIが整った英語を作れるようになった今、小学校英語は何を手放し、何を残すのかを考え直す時期に来ています。

AI時代に、小学校英語が手放したいのは、「量で測って安心する」英語です。発話量が多いほど成果だと見なす構造、間違いの少なさで安心する構造、一方向の発表設計です。

これらは、子どもの学びを支えてきた面もありますが、AIの普及によって、目的と手段の再点検が必要になりました。

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