サレジアン国際学園小学校インターナショナルクラス開設へ
小学校で今、英語で学べる「国際コース」の開設が増えています。英語で学べる科目や内容は学校によって異なりますが、年々、英語で学ぶ科目の比率が上がっています。
2026年4月には、東京・北区にある星美学園小学校が「サレジアン国際学園小学校」と校名を改め、新たにインターナショナルクラスを開設します。インターナショナルクラスの主要教科は、英語による授業を計画しています。

(写真:村田氏提供)
同校の国際化を進めるのが、学園長の大橋清貫氏です。大橋氏は、これまで広尾学園、三田国際学園を女子校から共学化し、国際教育を導入して人気校にしてきました。
サレジアン国際学園小学校インターナショナルクラスで学んだ児童は、同校中学校・高等学校のインターナショナルコースへの進学が可能で、小中高12年間にわたって国際教育を受けられるのが特徴です。サレジアン国際学園小学校のように英語で学べる小学校の数は、着実に増えています。
都内近郊だと、2008年 LCA国際小学校(神奈川・相模原市)、2019年 東京農業大学稲花小学校(東京世田谷区)、2022年 東京都立立川国際中等教育学校附属小学校(東京・立川市)、2024年昭和女子大学附属昭和小学校(東京・世田谷区)が国際コースを開設しています。
主に私立学校を中心に広がりを見せており、日本の初等教育において新たな潮流を形成しています。国際コースが増える背景には、英語教育を取り巻く環境の変化があります。
国際コースが増える背景とは?
まず、公教育において英語教育が早期化されたことがあります。2020年度から全面実施された学習指導要領により、公立小学校でも3年生から外国語活動、5年生から教科としての英語が必修化されました。
小学校の英語科目化は、中学受験、高校受験で英語がより重視されることを意識させ、結果的に早期英語教育に取り組む家庭が増えました。私立校は公立校と差別化を図るため、より英語4技能と多文化理解プログラムを実践しています。
最近では、幼児・小学生の英検取得も増加しています。筆者が経営していた英語保育施設でも年中、年長になると英検3・4級を目指す園児が増えます。英検協会は、公式サイトで英検受験の状況にて統計データを公表していますが、英検の受験者の幼児・小学生が増加しています。

2020年度は新型コロナウイルスの影響で減少が見られましたが、その後は急速に回復し、増加傾向にあることがわかります。2023年度の受験者数は、2018年度と比較して約33%増加しており、幼児・小学生の間で英語学習への関心が高まっていることがうかがえます。
プリスクールの増加と「おうち英語」の普及
プリスクール(英語保育施設)も、卒園児が年々増加しています。現在、全国に約800園あり、筆者が独自に調べたところ、東京都内に英語保育施設は244園あり、毎年3900名の卒園児を輩出しています。
朝から夕方まで英語で学ぶ園児の英語力は、英検3級・4級相当であり、保護者も英語力を維持してほしいと考えます。そのため英語力のあるプリスクール卒園児は、一部がインターナショナルスクールの初等部、小学校の国際コースを選びます。

「おうち英語」の拡大も、目を見張るものがあります。おうち英語とは、英語教室やインターナショナルスクールに通わせるのではなく、家庭で英語に触れる環境を作り、子どもの英語力を育てる学習方法のことです。
英語教材を組み合わせ、子どもの成長に合わせて調整する英語習得法です。おうち英語は、ディズニーワールドファミリーなどの英語の視聴覚教材を中心に発展してきました。現在は、アプリ、オンライン英会話などサブスクリプションモデルが増えています。
アメリカのEnuma(エヌマ)社が開発した家庭学習用英語アプリ「トド英語」は、報道によると、3〜9歳向けでの利用者が2024年に前年比70%増の11万人に達したといいます。教材自体は決して安くありませんが、英語学習のスタイルが大きく変化しています。
英語力のある小学生が目指す場所
英語力のある小学生は、従来は帰国生が中心でした。それが今では、国内のプリスクール卒園児で英語力のある子が増えていて、国公私立小学校またはインターナショナルスクールの初等部に進学しています。こうした子たちは、英語によるアフタースクールに通うことが増えており、夏休みには国内外のサマースクールに参加します。
さらに国際系中学校・高等学校を受験する傾向も高く、帰国子女アカデミー(KA)、J PREPなどの塾で英語力を向上させながら渋谷教育学園幕張、渋谷教育学園渋谷、広尾学園、広尾学園小石川、サレジアン国際学園、サレジアン国際学園世田谷、開智日本橋学園、三田国際科学学園、かえつ有明、芝国際、文化学園杉並ダブルディプロマなどを受験していきます。
国際系の人気は高く、寮のある新たな国際系では、UWC ISAK Japan、茗溪学園、東京都立国際高等学校などが英語で学ぶ国際バカロレア認定校として人気です。東京都府中市ある明星学苑は、帰国生、国際生向けに明星 institution 中等部を創設するなど英語力のある小学生に注目が集まっています。
現在、英語力のあるプリスクール卒園児が、年間3900名が卒業する中で、不足していたのが英語で学べる小学校というわけであり、その後は国際系中学校・高等学校に進学しています。

国際教育評論家、インターナショナルスクールタイムズ編集長
アメリカカリフォルニア州トーランス生まれの帰国子女。人生初めての学校である幼稚園をわずか2日半で退学になった「爆速退学」の学歴からスタート。帰国後、千葉・埼玉・東京の公立小中高を卒業し、大学では会計学を専攻。帰国子女として、日本の公立学校に通いながら、インターナショナルスクールの教育について興味を持つ。2012年4月に国際教育メディアであるインターナショナルスクールタイムズを創刊し、編集長に就任。その後、都内のインターナショナルスクールの理事長に就任し、学校経営の実務を積む。また教育系ベンチャー企業の役員に就任、教育NPOの監事、複数の教育系企業の経営に携わりながら、国際教育評論家およびインターナショナルスクールの経営とメディア、学校および海外のインターナショナルスクールから日本校の開校コンサルティングのセブンシーズキャピタルホールディングスの代表取締役CEOを務める
(撮影:今井康一)
ただ、小学校の国際コースの授業料は、年間150万~250万円と高額です。経済格差が国際教育を受けられる機会に直結しており、今後は国公立の小学校でも国際コースが増えるのが期待されます。
一方で課題もあります。英語で指導できる小学校の教員が少なく、担任は小学校教諭免許を持つ日本人に任せ、アシスタントとして外国人を入れるケースも多く、英語による教育の質には懸念があり、教員養成システムの構築が急がれます。
しかし、今後も小学校の国際コース拡大は、単なる英語教育という視点ではなく、英語力をツールにしてほしいという家庭の強い動きです。英語力の高い小学生が増えることは、その先の中学校・高等学校において英語で深みのある学びと世界から進学先を選べるようにしたい家庭の願いです。
英語で学べる中高生は、進学先を世界から選んでいきます。このような進路が都市部だけでは、英語格差が拡大していきます。地方においては、英語格差を広げないためにも英語で教科学習をするイマージョン校などを公立でも増やすことが必要ではないでしょうか。
(注記のない写真: Fast&Slow / PIXTA)