「全力でやれ!」有吉の叱咤で覚醒 「野呂佳代」AKB48の格差逆転し、女性アイドルの新たなセカンドキャリア切り拓けたワケ

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本人によれば、出演ドラマの選択についてはすべて事務所に任せていると言う(ニッポン放送『土田晃之 日曜のへそ』2025年8月31日放送回)。「目の前の仕事を全力で」という有吉の言葉が生きているということだろう。

目の前の役を全力でやりきることで、野呂佳代の演技は印象に残るものになる。元々演技力には確かなものがあるが、その積み重ねが「野呂佳代の出演するドラマに外れなし」という評価にもつながっているのだろう。

アイドルグループという格差社会のなかで

そういう話とは無縁に見えるかもしれないが、アイドルグループの世界には厳しい格差社会の一面がある。野呂が所属したAKB48はそれを逆手に取り、「AKB48選抜総選挙」としてあえて順位をつけてコンテンツ化した。そして大成功もした。

だが当然そこには、なかなか注目を浴びる機会を得られず、悲哀を味わうメンバーが生まれることにもなる。むしろ、そういうメンバーのほうが数としては多いだろう。卒業後芸能活動を続けるにしても、アイドル時代の知名度の差は色濃く影を落とす。

野呂佳代は、そんな不利なはずの境遇をはねのけたという点で貴重な前例をつくった。女性アイドルグループの歴史を振り返っても、こうした軌跡をたどった人間はきわめてまれだろう。

どのような立場に置かれても全力投球していることが自然と伝わる野呂の姿は、アイドルファンのみならずとも響くものがある。

だから私たち視聴者には、役の大小に関係なく野呂の印象は深く残る。そしてそのドラマが作品としても面白かった場合、視聴者の頭の中に「野呂佳代の出ていた面白い作品」としてインプットされる。「野呂佳代の出演するドラマに外れなし」は、そうした連想の産物なのではあるまいか。

そんな野呂佳代の現在の成功は、いまどこかで苦闘している大多数のアイドルにとっても、ここで終わりではないという希望になっているはずだ。野呂佳代は、確実に女性アイドルの新たなセカンドキャリアのかたちを開拓したのである。

太田 省一 社会学者、文筆家

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おおた しょういち / Shoichi Ota

東京大学大学院社会学研究科博士課程単位取得満期退学。テレビと戦後日本社会の関係が研究および著述のメインテーマ。現在は社会学およびメディア論の視点からテレビ番組の歴史、お笑い、アイドル、音楽番組、ドラマなどについて執筆活動を続ける。

著書に『刑事ドラマ名作講義』(星海社新書)、『「笑っていいとも!」とその時代』(集英社新書)、『攻めてるテレ東、愛されるテレ東』(東京大学出版会)、『水谷豊論』『平成テレビジョン・スタディーズ』(いずれも青土社)、『テレビ社会ニッポン』(せりか書房)、『中居正広という生き方』『木村拓哉という生き方』(いずれも青弓社)、『紅白歌合戦と日本人』(筑摩書房)など。

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