50代女性の「雇い止め」訴訟が問う非正規雇用の厳しい現実 —「次の誰かのために」闘った1年の歩みを追う
「表立っていない、相談に上がってこないだけで雇い止めは多いのではないかと思いました。Aさんが希望していた復職はかなわず残念ではあるのですが、今回Aさんへの謝罪や今後の対応を改めた和解になったと会議で伝えたところ、非常に勇気づけられたというようなお話もいただきました」(中村さん)
次の誰かのために
自身が雇い止めに遭ってから、Aさんは各地で起きている雇い止めや解雇の事例をネットで調べるようになりました。
「本当にいろんな問題があって、中には同じ会社にいる複数人で裁判を起こして、復職を認められた人と認められない人がいたという例もありました。
それを見ていて、自分が裁判を起こしたということが何かの形で残って、いま悩んでいる人の目に留まって『自分も戦おう』とか『会社は間違っているんだ、立ち上がろう』とか、何か少しでも、誰かのヒントになればいいなと思うようになりました。おこがましいですけれど」(Aさん)
非正規雇用(派遣、契約社員、パート、アルバイト)は、人件費を抑えたい雇う側の要望に政治が応える形で2000年代以降、規制が緩和され拡大していきました。総務省の労働力調査によると、2026年1月時点の雇用者数(役員を除く)は5843万人で、うち非正規雇用者は2155万人(36.9%)と約4割を占めています(総務省「労働力調査」)。
雇い止めに関する相談も多くなっています。厚生労働省のまとめによると、2024年度に寄せられた「民事上の個別労働紛争相談」は全国で延べ31万6072件。このうち雇い止めに関する相談は1万5602件に上っています。
Aさんの言葉です。
「ほとんどの方は(雇い止めに遭っても)諦めざるを得ないのだと思います。なぜできないかも分かります。たとえば家族がいるから先に進もうとか、周りに知られたくないとか、時間がもったいないとか、経済的な事情とか…。
それでも(今回の件を通して)『自分は行動できないけど、こういう人がいた、会社が間違っていた』というだけでも、もしかしたら先に進める人がいるかもしれない。私自身もそこに救いを求めているのかもしれないです」
復職はかないませんでした。しかし「よくあること」と見過ごされてきた非正規の雇い止めに声を上げたAさんは、誰かのための道をつくったのだと思います。
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