50代女性の「雇い止め」訴訟が問う非正規雇用の厳しい現実 —「次の誰かのために」闘った1年の歩みを追う
Aさんによると、会社側は採用時に「犯罪を犯すなどの法律違反をしない限り、契約の不更新はない」といった説明をAさんにしたといいます。Aさんはその言葉を信じて働きました。そして契約は3回更新されました。
雇い止め前にも、会社側から新年度(2025年度)の業務内容の説明を受けていたほか、健康診断の日程も決まっていたといいます。Aさんが所属していた部署や担ってきた業務もなくなったわけではなく、以前と変わらず継続していました。
これらのことを踏まえ、Aさん側は「契約の更新を期待する合理的な理由があった」と主張しました。
「契約更新への期待」を労働者に抱かせたかどうかは、雇い止めが無効になるかどうかの一つの分かれ道になります。このことは、雇い止めに法的制限をかけて非正規労働者を守る労働契約法19条に記されています。
労働契約法19条は、たとえ契約期間が満了になったとしても、以下の①②に当てはまり、契約の不更新が「客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められないとき」には、雇い止めが無効になることを示しています。
つまり、Aさんのような期間に限りのある労働者(パート、アルバイト、契約社員、派遣社員)に対して、契約更新を重ねて「今後の更新」を期待させていたにもかかわらず「期限がきたから」と一方的に雇い止めをすることは認められない――ということです。
虻川弁護士は「雇い止めは会社側の都合ですぐできるものだと思われがちかもしれません。解雇よりはハードルが低く、法的な立場が弱いことも確かです。だからといって、どんな場合でも雇い止めができるかといえば、そうではないのです」と指摘します。
労働審判の中での「二次被害」
虻川弁護士は、Aさんの雇い止めの理由として会社側が挙げた「人員の整理・見直しが必要」という点にも疑問を呈しました。
「会社の決算資料などを見ても財務状況は健全です。Aさんを雇い止めしなくても赤字経営になるわけではなく、そもそも人員整理の必要性自体が認められない。Aさんだけを更新しない合理的理由は認められません」(虻川弁護士)
一方、仮処分の答弁書などによると、会社側は人員の整理について「今後の売上高の増加が見込めない」「光熱費や保守管理費が年々増加していくことが見込まれる」など、合理的な理由があったと主張していました。
また会社側は、Aさんに対して「犯罪を犯すなどの法律違反をしない限り、不更新はないといった発言はしていない」と否定。Aさんが抱いた「更新への期待」についても「更新の回数は3回、雇用の通算期間は3年6月に留まるもので、更新を期待する合理的理由は存在しない」と主張し、争う姿勢を見せていました。




















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