労働者と雇用主が社会保険料を支払わないことを違法と判断、中国で進む「社会保険改革」に労使とも不満を持つワケ
中国南部・東莞の自動車部品工場に勤めるジョン・チャオさん(37)とチャーリー・ウェイさん(23)はともに、中国政府が近年進めた社会保険制度改革を巡る最高人民法院(最高裁)の画期的な判決への勤務先の対応に不満を抱いている。しかし、両者の不満は全く異なる。
最高裁は2025年9月、労働者と雇用主が社会保険料を支払わないことを違法と判断。これにより、社会保障制度を通じて生産者から消費者に対する長期的な資源再分配の基盤を整えた。
すると、チャオさんとウェイさんの勤務先はコスト削減のために給与体系を改定し、1万2000元(約1747米ドル)の月収のうち約3分の1の基本給だけを社会保険料算定の対象にした。現在では従業員側も社会保険料の一部を自己負担しなければならない。
ウェイさんは社会保険料への拠出分を考慮した長期的なメリットよりも、「今すぐにもっと多くの現金を」と求めている。これに対し、勤務先が収入全額を社会保険料に算定することを求めるチャオさんは「問題が起きるまでは誰もセーフティーネット(安全網)が必要だとは考えない」とし、「若い世代はそれを理解していない」とこぼした。
賃金を引き下げるケースも
最高裁判決から約半年が経過したが、労働者も雇用主もエコノミストも、順守の状況は完全ではないと指摘する。
人事社会保障省と国務院(内閣に相当)はコメントの要請に応じなかった。人事社会保障省の報道官は今年1月、社会保険制度改革が「着実に推進されている」と主張した。
ロイターが10人を超える労働者と工場経営者に取材したところ、企業は判決に対して自社負担を最小限に抑える形で対応しており、場合によっては賃金を引き下げるケースさえあった。
大半の企業は給与全額ではなく、より低い基本給で社会保険料を算定しており、残りを賞与(ボーナス)や福利厚生として再構成した。一部の労働者と1人の工場経営者は社会保険料を支払う余裕がないため、依然として全く支払っていないと明らかにした。




















