「私は打ちのめされてしまったのです」 朝ドラ「ばけばけ」子どもが生まれ、日本国籍取得考えるハーンに芽生えた意外な感情

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「英雄は英語のhideous(いまわしい、ぞっとする)に語呂が似ていて、よくない」

そもそもギリシャ生まれのハーンは「英国人」と自称したことがなかったこともあり、「英雄」も却下。「最初に生まれた子」ということで「一雄」の名に落ち着くことになった。

出産時にはまだ入籍していなかったハーンとセツ

名づけ問題が解決すると、ハーンはより厄介な問題と向き合うことになる。それは「戸籍」である。実は、セツとは結婚式は挙げたものの、まだ籍を入れていなかった。

ハーンが特別だったわけではない。当時、在日していた英米人にとって、日本の女性と正式に結婚するというケースは、極めて稀なことだった。結婚式の直後、ハーンは日本研究の先輩で親交が深いチェンバレンから、こんなアドバイスを受けている。

「この国ではごく普通に行われていること、すなわち、法律上の結婚はしないでおくことです。あなたは多分日本人になりたいとは思わないでしょうし、また日本人である妻をアメリカに連れていくことも躊躇なさるはずです。そんなことをすれば、たぶん彼女は大変な不幸を負うことになりましょう」

実は、イギリス軍医だったハーンの父チャールズは、駐在した島の名士の娘と激しく恋をして、子どもが生まれると周囲の反対を押し切って、駆け落ち同然に正式に結婚している。

その後、チャールズが赴任先に滞在する一方で、妻と子だけが夫の実家であるアイルランドで暮らすことに。妻は言葉と文化の壁に苦心し、孤独感から精神的に疲弊したらしい。ハーンは父方の親戚に預けられることになり、2人はやがて離婚することになる。

これもまたチェンバレンがいうところの「大変な不幸」の一例なのだろう。

だが、ハーンからすれば、夫婦で戸籍を一緒にすることで、経済的な安定を図りたいという思いが強かった。より正確にいえば、ハーンは死後に自身の遺産が、顔も知らない母国の親戚たちのもとにいってしまうことを恐れたのである。

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