「私は打ちのめされてしまったのです」 朝ドラ「ばけばけ」子どもが生まれ、日本国籍取得考えるハーンに芽生えた意外な感情
無事に我が子が生まれて産声が聞こえたとき、思わず産婆さんにキスをしたハーン。赤子と対面したハーンの様子を、セツはこんなふうに描写している。
「始めてうぶ声を聞いた時には、何とも云えない一種妙な心持がしたそうです。その心もちは一生になかったと云っていました。赤坊と初対面の時には全く無言で、ウンともスンとも云わないのです。後に、この時には息がなかったと申しました。よくこの時の事を思い出して申しました」
言葉にできない感情が胸に湧き上がってきたようだ。このときの気持ちをのちに「一生のうちでもっとも不思議な感情は、はじめて自分の子どもの細いさけび声を聞くときだろうと思います」と表現している。
よほど嬉しかったのか、親しい友人たちに、父になったことを報告する手紙を次々と出している。
「私はこの数週間、ずっとある事をお伝えしようと待ち続けていました。予想より随分遅れましたが、昨夜、私の子供が誕生しました。大きな黒い眼をもった、元気な男の子です。鼻は私に似ていますが、他の点では母親似で、奇妙な具合に私の特徴と混じりあっています」
セツが「カジオ(梶夫)」の名を拒絶したワケ
手紙を書きながらハーンの頬が緩む姿が思い浮かぶが、子どもの名前をどうするかでは夫婦でひと悶着あった。
当初、ハーンは自身の名「ラフカディオ」にちなんで、「カジオ(梶夫)」と命名したかったらしい。だが、セツから思わぬ反対意見があがる。
「歌舞伎や浄瑠璃に登場する悪役の梶原を思い出させます」
「梶原」とは、鎌倉幕府初代将軍の源頼朝に仕えた、梶原景時のことだ。
梶原景時は「源平合戦」において、源義経と戦術を巡って対立。そして合戦後には、景時が義経について、あることないこと頼朝に吹き込み、結果的に義経は排除されることになった……。
というのが、流布している話だ。「源平合戦」を題材にしたフィクションは、大抵のものが景時を悪人として扱っており、セツも影響を受けていたようだ。
セツはさらに「梶」は「火事」を連想させるからとハーンの考えを退けると「あなたが英国人なので、英雄にしましょう」と代替案を出した。しかし、今度はハーンがこう反対する。




















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