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無人化の流れに逆行? 日本橋高島屋が《エレベーター係》を残す理由…百貨店で唯一「手動式エレベーター」を現役で運行

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  • 肥沼 和之 フリーライター・ジャーナリスト
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6基ある手動式エレベーターの1基は、土日祝日は高齢者や体の不自由な人、ベビーカーを押した人たちの専用になる。混雑する曜日なのに、あえてそう設定していることからも、安全・安心への大きな配慮を感じられる。

安全の次に大事にしているのは、「おもてなし」。高島屋の経営理念である「いつも、人から。」を体現するように、案内係は接遇にも力を入れている。

笑顔や言葉遣い、振る舞いに気をつけるのはもちろん、来店客に「この商品はどこにある?」と聞かれたときにはすぐ答えられるよう、時間があるときは各フロアの売り場を歩いて、どこに何があるか把握する努力を欠かさない。

エレベーター係の制服を着た、高島屋のマスコットキャラクター「ローズちゃん」(撮影:今井康一)

さらに、急いでいる方には素早く的確な案内を、ゆっくり買い物を楽しんでいる方には明るく丁寧な案内というふうに、来店客に合わせた対応も心がけている。

売り場の販売員が困っていたら、サポートするのも大事な役割。販売員は、所属する店舗や扱う商品に関してはプロだが、高島屋全体となるとわからないことも多いためだ。案内係はエレベーターの操作だけでなく、あらゆる人の「駆け込み寺」のような存在なのだと、宮城さんは笑顔で話した。

ちなみに案内係の制服は、独り立ちをして初めて着られる。平均で1年ほどかかるのだそう。制服は見た目が華やかなだけでなく、一人前の証しでもあるのだ。

この制服を着るために、(撮影:今井康一)

エレベーター内での「思い出」

案内係を約10年している諸我さんは、仕事の楽しさを「人との関わり」だという。来店客と接するのは基本的に、エレベーターに乗車している短い時間だけなので、世間話をすることはあまりない。それでもたくさんの思い出があると続ける。

「お客様に売り場を聞かれて、ご案内した後に、その方がお礼を言いに戻ってきてくれたり、お買い物袋を掲げて『買えたよ』と伝えてくださったりすることがあります。感謝の言葉や気持ちをいただけるのが一番うれしいです。

このエレベーターに乗るために、遠方からお越しになる方もときどきいらっしゃいます。何往復もされる方や、お子様連れがアトラクション感覚で乗ってくださることも。いろいろな楽しみ方があるのも面白いですね」(諸我さん)

創業時から変わらない昇降ボタンやランプに歴史を感じる(撮影:今井康一)

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【案内係は日本橋高島屋という重要文化財の一部】

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