「発売日ルール」のせいで"ほぼ空のトラック"が走る、出版業界の皮肉な構造とは?読者と出版社の利益が衝突する構造の裏側

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問題は、発売日が揃うことでお客さんの財布の紐は緩むのか・きつくなるのか、です。それまで、月に5回くらい書店に行って、毎回2000円分の本を購入していたお客さんが、発売日に合わせて月に3回しか来店しなくなった時、どれだけのお金を落としていってくれるか。「月に5回×2000円=1万円」だったものが、「月に3回×3000円=9000円」になってしまえば、結局、書店にとっても出版社にとってもマイナスです。

つまり、書籍・雑誌の発売日を揃えることは、取次にとって明らかにメリットがあるけれど、書店にとってはプラスもあればマイナスもあり、出版社(と作家)にとってはマイナスのほうが大きい、という構図になります。

このように、書店・出版業界の問題は、出版社・取次・書店の3者の関係が「三すくみ」と言うか、「あちらを立てればこちらが立たず」というものばかりです。『三国志』の魏・呉・ 蜀(ぎ・ご・しょく)のように、たがいに身動きが取れなくなっています。

書籍の約3割、雑誌の半数近くが返品されている事実

もうひとつ、書店・出版業界でよく取り上げられるのが、「返品率」の問題です。書店は売れ残った本を取次に返品することでキャッシュを回収できます(もちろん、いくらでも好きなように返品できるわけではなく、返品可能な期間や頻度などの取り決めはあります)。

業界では長年にわたり、返品率の高さが問題視されてきました。直近のデータを見ても、書籍は3割前後、雑誌に至っては実に半数近くが返品されています。

一度届けてもらった本を送り返すのだから、当然ながら、そこには無駄な配送コストがかかります。また、返品する本は現場の書店員が箱詰めするため、労働コストもかかっている。返品率を下げて収益を改善しようというかけ声は、業界関係者であれば耳にタコができるほど聞いてきたはずです。

ここでやり玉に挙げられることが多いのが、「見計らい配本」です。つまり、注文していない書籍が勝手に送られてくることで、その店の客層と品揃えの間に乖離が生じ、結果として返品率が上がっている、という批判があるのです。

読者のみなさんのなかにも、「書店に並んでいる本の多くは、書店員が注文したわけではなく、取次から自動的に送られてきている」事実を知って、驚いた方、不思議に感じた方がいらっしゃるのではないでしょうか。そんなやり方をしていては、個性のある魅力的な書店になるはずがない。本の“目利き”である書店員が自らの責任と判断で商品を仕入れる(「自主仕入れ」と言います)のが、書店のあるべき姿ではないのか、と思われたかもしれません。まったくもって、その通りです。

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