「発売日ルール」のせいで"ほぼ空のトラック"が走る、出版業界の皮肉な構造とは?読者と出版社の利益が衝突する構造の裏側

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ですが、書店経営者として正直なところを言わせてもらうと、もし取次から「見計らい配本は評判が良くないので、来月からやめます」と言われたら、私が経営する書店(きのしたブックセンターや佐賀之書店)の営業はまちがいなくストップするでしょう。うちだけでなく、多くの書店が「頼むから、考え直してくれ」と取次に懇願するに違いありません。

日本における紙の書籍の新刊発行点数は2002年以降、1年あたり7万点台で推移していました。ここ数年下落傾向にあるとはいえ、2024年時点で、6万5322点が刊行されています(『出版指標 年報2025年版』)。単純計算で、1日あたり180点前後の本が発売されていることになります(ちなみに、これはあくまで書籍の点数です。雑誌の「銘柄数」に関して言うなら、2024年時点で2341点です)。

この膨大な量のタイトルを、書店員が逐一チェックして、自店に仕入れるべきか否か、仕入れるなら何冊仕入れるか、といったことを判断して発注をかけるのは、はっきり言って不可能です。それをやろうと思ったら、選書だけを担当する社員なりアルバイトなりを別途、雇用する必要がありますが、そんな余裕がある「町の書店」はほとんど存在しないでしょう。

紀伊國屋書店のような一部大手には、仕入れを専門とする部署が存在し、「目利き書店員」が選書を担当しているようですが、在庫の全点を発注で揃えているわけではありません。現状の「見計らい配本」に問題が多いことは事実ですが、この仕組みがなくなって困るのは当の書店なのです。

返品率の抑制・削減を目指す新たな取り組みも

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返品率の抑制・削減に関しては、大手取次をはじめ、業界の各プレイヤーが対策を講じています。たとえば日販はここ十数年、「返品が減るほど書店の粗利が上がる」契約に力を入れています。返品率の削減によって得られた利益を、出版社・取次・書店の3者で分け合うという「三方良し」の契約で、一定の成果を上げているようです。

また近年、コミックス大手の刊行物を筆頭に、「RFID(Radio Frequency Identification)」の利用も普及が進んでいます。これは本に付ける小さな電子タグのことで、「どこにどの本が何冊あるか」をリアルタイムで把握するための仕組みです。当然、導入にはそれなりのコストがかかりますが、数年前から経済産業省の後押しもあり、業界でのいっそうの浸透を推し進めているところです。

今村 翔吾 小説家、書店経営者

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いまむら しょうご / Shogo Imamura

小説家、書店経営者。1984年、京都府生まれ。関西大学文学部卒業。ダンスインストラクター、作曲家、埋蔵文化財調査員を経て、2017年に火消の活躍を描いた「羽州ぼろ鳶組」シリーズ第1作『火喰鳥 羽州ぼろ鳶組』でデビュー。2016年に第23回九州さが大衆文学賞大賞・笹沢左保賞、2018年に『童神』で第 10回角川春樹小説賞、『火喰鳥 羽州ぼろ鳶組』で第7 回歴史時代作家クラブ賞・文庫書き下ろし新人賞、2020年に『八本目の槍』で第41回吉川英治文学新人賞、『じんかん』で第11回山田風太郎賞、2022年に『塞王の楯』で第166回直木三十五賞を受賞。2025年に『イクサガミ』が Netflix にてドラマ化、2026年に『火喰鳥 羽州ぼろ鳶組』がTVアニメ化された。

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