「発売日ルール」のせいで"ほぼ空のトラック"が走る、出版業界の皮肉な構造とは?読者と出版社の利益が衝突する構造の裏側

著者フォロー
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小

たとえば取次の倉庫では、トラックが横付けしてから荷物を受け渡すまでの「待ち時間」を数分でも短くするために日々、動線やシステムの改修が行われています。入荷→仕分け→積み込みの順番を組み替えたり、積む順番に合わせてパレットの並べ方を最適化したり、ドライバーの到着時刻を平準化したり……。このような細かな改善を積み重ねて、30分かかっていた待機が15分で終わるようになれば、その分だけトラックや人員の稼働コストは下がります。こうした涙ぐましい努力を、編集者や書店員はほとんど知りません。

読者のみなさんのなかには、「だったら、その発売日協定とやらをなくせばいいのでは?」と思われた方もいるかもしれません。もっともな指摘です。けれど、電子書籍がこれだけ普及した社会でそれをやられたら、地方の書店はどうなるか?

発売日協定をなくすことは早い話、東京をはじめとする大都市圏には発売日当日に雑誌やコミックスを届けますが、地方は数日遅れになりますよ、ということです。これだと、地方在住の読者は紙から電子に流れるでしょう。なにしろ、電子であれば、発売日の午前0時にダウンロードして読めるんですから。数カ月待ち続けた大好きなコミックスの最新刊、1秒でも早く読みたいのがファンの心理です。リアル書店を応援するために、数日待って紙で読む、という選択をする奇特な読者はごく少数に限られると思います。

「書籍・雑誌の発売日を一律」にしても生じる不具合

取次と書店の双方にメリットがあるであろう案は、出版社が協定を結んで、書籍・雑誌の発売日を一律にすることです。たとえば、毎月5日、15日、25日を、書籍・雑誌の発売日と決めてしまう。取次にとっては、各社の刊行物の発売日が揃うおかげで、多くのタイトルを一度に運べます(=トラックの積載率が上がる)。

書店にとっても、毎日すこしずつ新刊が届くよりは、特定の日にドカッと送られてきたほうが負担は減るはずです。発売日の前日や当日だけたくさんのアルバイトにシフトに入ってもらって、それ以外の日は最低限の人数で業務を回せば、人件費を1~2割カットできるかもしれません。

でも、これは出版社にとってはあまり嬉しくないのです。想像してみてください。「週刊少年ジャンプ」「週刊少年マガジン」「週刊少年サンデー」「週刊少年チャンピオン」が全部同じ日に発売されたら、どうしたってパイの奪い合いが起きるでしょう。これは、作家も同じです。「俺の新作、湊かなえ先生とバッティングしたら嫌やなぁ」「うわ、朝井リョウ先生と同じ日やん。最悪や」みたいなことが、発売日のたびに起きるわけです。

いっぽう、読者にとっては、発売日が統一されることはメリットのほうが大きいはずです。だって、新刊をチェックしたければ、特定の日に書店を覗けばいいのだから。「毎月5・15・25日は書店に行こう」などと予定を立てやすくなるでしょう。

次ページ返品率と自主仕入れ
関連記事
トピックボードAD
ビジネスの人気記事