運べば運ぶほど赤字…出版物流を襲う「雑誌激減」の深刻。コンビニ配送撤退の裏で取次が白旗を上げるXデー

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出版の物流危機について考えた時、この問題に直接的に関係があるのは、出版社・取次・書店の3者です。このなかで、他と比較してまだ余力があるプレイヤーは誰かと言えば、それは明らかに出版社、それも、小学館・集英社・講談社・KADOKAWAに代表される大手でしょう。

本気で取次を救いたいと思うなら、莫大な利益を上げている大手出版社が支えるしかないと私は思います。「格差社会」という言葉は日本でも定着してしまいましたが、出版業界の格差はいっそう深刻です。儲けているプレイヤーとそうでないプレイヤーの差が、あまりにも激しい。仮に、「書店を支えよう、出版文化を支えよう」が、関係者全員の総意であるなら、現状、切れるカードを持っているのは大手出版社だけです。

私自身、会社を経営する身ですから、企業が儲けることが悪いなどとは1ミリも思っていません。出版社も書店も、力のあるところはどんどん儲けたらいい。ただ、このままでは出版業界、書店業界が立ち行かなくなるとわかっているはずなのに、目の前にある問題に取り組むために自分たちの利益を再投資するという発想がないように見えてしまう。それが、もどかしい。

大手出版社で働く人たちに、私はシンプルに、ストレートに聞いてみたい。「このままだと、取次も、書店も、中小の出版社も大変なことになりますよ。それでもいいと思いますか?」と。それで、「自分ら、コミック(電子書籍)とIP(知的財産)でめちゃくちゃ儲けてるんで、正直リアル書店とかどうでもいいです」と返ってくるなら、いっそすがすがしいですよ。

そうすれば私たちだって、「それならもう、あなたたち抜きでやりますわ」と言えるでしょう。けれど、実際には、大手出版社の人間は口が裂けてもそんなことは言いません。私はそこに、欺瞞を感じてしまうのです。

出版業界の物流危機、改善策は「本の地産地消」

書店・出版業界が直面している物流危機を改善するために、私案をひとつ挙げます。実現の見込みは薄いかもしれませんが、「オンデマンド受注が可能なハイスペックな印刷所を、日本各地に設立する」です。

現状では、出版社の雑誌・書籍を受注する印刷工場は東京近郊など大都市圏に集中していますが、それを分散させるのです。各地域に、著者・編集者が求める高い要求に応じられるハイレベルの印刷所を作って、その土地の書店に配送する本は、その土地の印刷所で刷るようにする。いわば「本の地産地消」です。そうすれば、物流の負担は確実に減るし、配送効率が改善されることで、配送業者で働く人たちの給与を上げることもできるはずです。

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