産むなら援助なし「内密出産」救えない日本の実情――妊婦の相談・出産の援助、子の支援、養子縁組まで手厚いドイツとの差

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ドイツでは、内密出産で生まれた子の母親の情報は公的機関であるドイツ連邦家族・社会任務庁が保管していて、子どもは16歳になると開示請求することができる。

日本には情報公開についての明確な基準はないが、慈恵病院も賛育会病院も18歳としている。ただし、母親の同意が必要だ。

また、日本では妊娠について相談できる公的な窓口も、児童相談所も数が少なく、母子への支援が手薄だ。そこもドイツとは大きく違う。

大江事務局長によるとドイツでは、妊娠葛藤相談所は人口8500万人に対して約1600カ所、つまり5~6万人に対して1カ所。児童相談所は約550カ所で、約15万人に対して1カ所という状況である。

一方、日本にはドイツのような公的な妊娠葛藤相談所は存在せず、民間や公設の妊娠SOS相談窓口が55カ所あるのみ(「一般社団法人全国妊娠SOSネットワーク」の登録)。

児童相談所にいたっては、1億2千万人に対して約240カ所、人口50万人に対して1カ所しかない。「明らかに少ないし、児童相談所にとって過重負担の状態にあると言えます」と大江事務局長は話す。

児童相談所が少ないということは、親と暮らせない子どもへの支援体制が弱いということだ。そのため、なんらかの理由で親と暮らせない子どもが新しい親と家族になる「特別養子縁組」の成立数も少なく、多くは乳児院や児童養護施設で育てられる。

「公的機関である児童相談所が、実親と養親をしっかり調査したうえで、赤ちゃんポストで託されたり、内密出産で生まれたりした子どもを新しいしっかりした家庭へとつなげる必要がある」と、賀藤院長は話す。

社会で子どもを育てるという意識

少子高齢化が予想以上のスピードで進む日本。どうにかしなければならないと言いながら、国は子どもや子育て、妊娠・出産に十分な支援をしないのはなぜか。

小児科医として長年、子どもの問題に関わってきた賀籐院長はこう話す。

「日本には『社会全体で子どもを育てる』という意識があまりに希薄です。『子どものことは個々の家庭や親の問題』という風潮が強すぎるのです。また、子どもの人権に関する意識も低い。だから子どもや妊娠・出産には予算がつきにくく、制度も改善されづらいのです」

事実、日本の子ども関連予算(家族関係社会支出)の対GDP比は約2%で、OECD(経済協力開発機構)平均や、欧州主要国と比較すると非常に低い。さらに厚生労働省の調査によると、ひとり親世帯(約90%が母子家庭)の相対的貧困率は、44.5%と報告されている。

そして何より、日本では公教育において、若年者の妊娠や予期せぬ妊娠を防ぐための性教育が十分に行われていない。

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