原発事故から15年。原発推進の風潮にあらがい、営農型太陽光発電で「エネルギー自給自足」を目指す被災者たち。その苦闘と希望への道のり
近藤さんたちはさらに営農型ソーラーの拡大を企画したが、資金集めは難航した。13億円が必要で、近藤さんは複数の金融機関を回って説明した。何度も断られ、「吐きそうな思いもしました」という。結局、みやぎ生活協同組合が一緒に取り組むことになり、資金集めに弾みがついた。
そして21年9月、事業を行う「二本松ご当地エネルギーをみんなで考える株式会社」、みやぎ生協、環境エネルギー政策研究所(ISEP)の3者が共同で、二本松営農ソーラー株式会社を立ち上げた。
営農は、近藤さんと大内さんが代表の農業法人Sunshineに委託する。Sunshineの社員は2人。そのうち1人は福島第一原発事故の避難者である塚田晴さんだ。
塚田さんは震災当時9歳で福島県にいて、事故後は両親とともに兵庫県に避難。果樹栽培を学んでいたところ、近藤さんに声をかけられてこの農場のために戻ってきた。
設備は21年9月に完成し、同11月に竣工式を行った。9500枚の太陽光パネルを高さ3メートルの位置に設置し、その下で作物を育てる。発電施設の出力は3900キロワット(618世帯相当)だ。
13億円を11年で回収できる
農場6ヘクタールのうち、1ヘクタールはブドウ園で、シャインマスカット、ピオーネなど人気の7品種98本を植えている。ほかにエゴマ、イエローマスタード、そば、大豆、ニンジン、小麦を育てている。ブドウ以外は有機栽培と認証されている。
電気の収入から維持管理経費を除いた分で太陽光発電設備の初期投資を回収していくと、11年かけて13億円を回収できる見通しだ。
今後の課題は、いかに農業収益のほうを上げていくかだ。23年には去勢雄のホルスタイン2頭を太陽光パネルの下で放牧した。食肉はソーセージやローストビーフに加工した。
放射能測定は厳しく行っている。国が設けた基準は100ベクレル/㎏だが、近藤さんがエゴマ油を卸しているグリーンコープの検出限界値は1.21~1.33ベクレルで、超えるものは出ていない。22年に煎りエゴマから2ベクレルが出た後は検出限界値未満が続いている。
ほかの農産物は、民間の測定所で測定している。限界値は0.8~1.6ベクレル/㎏で、これを超えるものは検出されていない。
「福島の土壌にはまだ汚染が残っている。きれいになったとは言わない。けれどもしっかり測って検出限界値未満だということは言える」(近藤さん)
秋には収穫祭を開き、近所の人たちを呼び、農場で採れた小麦を使ったビールをふるまい、ギターと歌で楽しんだ。





















無料会員登録はこちら
ログインはこちら