原発事故から15年。原発推進の風潮にあらがい、営農型太陽光発電で「エネルギー自給自足」を目指す被災者たち。その苦闘と希望への道のり
近藤さんによると、23年時点で福島県内の営農型ソーラーは123カ所。近藤さんは、これを2050年には2万5000カ所に広げたいと考えている。近藤さんが代表理事の一人を務めるソーラーシェアリング推進連盟は「50年に農地の5%に営農型発電を導入し、国内発電量の2割をカバーする」との目標を掲げており、これを福島にあてはめると2万5000カ所になる。3軒に1軒の農家がソーラーを設置すれば可能だという。
近藤さんたちが20代の塚田さんと30代の男性の2人を雇用しているのも、5年後にはこの2人が独立してさらに営農型ソーラーを広め、後継者も育ててくれればと願うからだ。
ただ、大内さんは今後に懸念を抱いている。
「まだまだ営農型ソーラーの認知度は低い。国が旗を振らず、今後の国の支援が見込めない中で、資金面でも銀行が渋るため、厳しい。打開策が見えない」
神奈川県厚木市で営農型ソーラーを展開する「あつぎ市民発電所」の遠藤睦子さんも「農家の理解が得られないのです」と窮状を打ち明ける。
自民党の農林部会長だったある議員は営農型ソーラーについて、「私はもっと広げたいと思っているんですが、商工族の先生たちが『畑に影をつくるのか?』『中国製のパネルが……』と難色を示し、進まないんです」と言って苦笑いする。
中国にトップの座をさらわれ、エネルギー自給率も低下
高市早苗首相は、首相就任前の総裁選の記者会見(25年9月19日)で「私たちの美しい国土を、外国製の太陽光パネルで埋め尽くすことには猛反対でございます」と言った。
高市首相の意向を受ける形で経産省は地上設置の事業用太陽光発電への支援策を見直し、固定価格買取制度(FIT)やフィードインプレミアム制度(FIP)に基づく新規支援を27年度から取りやめる検討をしている。
実は、太陽光パネル、太陽電池は、日本がかつて世界トップシェアだった。
政府は国家プロジェクト「サンシャイン計画」「ニューサンシャイン計画」で太陽光発電の低コスト化を実現すべく、1997年度から住宅向けの太陽光補助金制度を推進した。日本は2000年台は太陽電池のシェアで世界のトップシェアを占めていた。日本のシェアは02年に44.7%、04年に50.4%(過去最大)などと、07年まで9年間にわたって世界のトップだった。
しかし政府は研究プロジェクトを終了させ06年に住宅用太陽光補助金制度を打ち切り、中国に追い抜かれていった。原子力立国計画を掲げ、原子力に舵をきっていった。
福島原発事故の後、政府は再エネの固定価格買取制度(FIT)を創設し、太陽光発電の普及にも本腰を入れた。しかし一度失ったアドバンテージを取りもどすことは難しく、中国企業の攻勢が強まる中で、国内で太陽光パネルを作る企業はほとんどなくなってしまった。
だが、世界に目を転じると、原子力の発電量は横ばいだが、再エネは世界中で伸び続けている。英国のエネルギー問題のシンクタンク「エンバー」の分析によれば、再エネはついに25年前半に世界の発電量の34.3%を占め、トップとなった。これに対して日本の再エネは20%前半で、伸び率が停滞している。
日本の経済界でも再エネへの注目度は高まっている。日本経済新聞が3カ月ごとに行っている主要会社の経営者100人アンケートがある。25年10月8日に配信した調査結果に関する記事によれば、日本が今後、発電比率を高めるべきだと経営者が考えるエネルギーのトップは原発ではなく、太陽光だった。
高市政権の原発推進政策は、エネルギー自給率を下げるばかりか、世界の趨勢にも逆行しているのではないだろうか。
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