「古臭い柔術をつくり変えよう」ハーン招いた嘉納治五郎が柔道を創り上げたワケ
常に先輩に頭を下げて、食事、風呂、掃除洗濯と家事に追われる日々。勉強さえも邪魔されながらも、治五郎は持ち前の負けん気の強さで、トップクラスの成績をキープしている。
だが、そのことがまた「生意気だ」と先輩から目を付けられることになってしまう。
ある日、部屋で勉強していると先輩から引っ張り出されて、相撲の相手をさせられることに。何度も何度も地面にたたきつけられた。全身を痛めつけられながら、治五郎のなかで、こんな思いが沸き上がってきた。
「自分は体が弱い。でも、柔術なら体が小さくても強くなれる。早く習って、先輩たちに負けない自分になりたい」
だが、時は文明開化の真っただ中。柔術はもはや古い時代遅れの武術として扱われており、父からも反対されてしまう。
それでも治五郎は諦めなかった。さまざまな柔術道場の門を叩き、流派の違いを経験すると、21歳で「講道館」という自分の道場を開く。
「古臭いといわれる柔術が時代に受け入れられるように、自分の手でつくり変えよう」
そんな決意のもと、治五郎は「柔道」を創始することになった。
治五郎とハーンには共通点があった
治五郎はやがて教育界からも注目されて、31歳で文部省参事官に就任。その後、熊本第五中学校の校長へと抜擢された。
中学校では、校長官舎の物置を道場にあてながら、学生たちに柔道を教えるなど、熊本でも柔道を普及させた。その一方で、英語教師としてラフカディオ・ハーンを招くなど、教育環境の整備に尽力している。
幼少期や青年期の過酷な状況を乗り越えて、自分だけの道を切り拓いた治五郎。古臭いとされる伝統を評価した点も含めて、ハーンとの共通点は多い。
ハーンが治五郎のことを「一度会っただけで、久しい友であるかのような気がする」と言ったのも、根底のところで通じるものがあったからではないだろうか。
【参考文献】
嘉納治五郎『嘉納治五郎 私の生涯と柔道』(日本図書センター)
E・スティーヴンスン著(遠田勝訳)『評伝ラフカディオ・ハーン』(恒文社)
牧野陽子著『ラフカディオ・ハーン-異文化体験の果てに』(中公新書)
小泉八雲著、池田雅之編『小泉八雲コレクション さまよえる魂のうた』(ちくま文庫)
小泉節子著、小泉八雲記念館監修『思ひ出の記』(ハーベスト出版)
小泉凡著『セツと八雲』(朝日新書)
NHK出版編『ドラマ人物伝 小泉八雲とセツ:「怪談」が結んだ運命のふたり』(NHK出版)
工藤美代子著『小泉八雲 漂泊の作家ラフカディオ・ハーンの生涯』(毎日新聞出版)
櫻庭由紀子著『ラフカディオハーンが愛した妻 小泉セツの生涯』(内外出版社)
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