京大在学中にデビュー"60歳漫画家の原点"。「将来はエリートになると思っていた」が、学費のために執筆。『コンクリートの船』への思いも語る

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ーー戦争への立ち位置を見つめ直したとのことでしたが、読者にもそれを期待しますか。自民党圧勝で終えた先日の衆議院選挙からは、戦争や国防に対する社会の意識が変化を迎えていることも感じます。

本作で描くのは背景としての戦争です。ただ、そのなかでも、当時の市井の人々がどう巻き込まれたか、どんな感情や感覚でいたかは、きちんと取り上げないといけないと思いました。読者の方には、そういったところから戦争を考えたり、感じたりしていただけるかもしれません。

村上たかし/1965年生まれ。大阪府出身。広島県在住。『ナマケモノが見てた』でデビュー。代表作『星守る犬』は、映画化もされた。他に『探偵見習いアキオ…』『PINO』など著書多数。現在、ビッグコミックオリジナルにて『コンクリートの船』連載中(写真:村上たかしさん提供)

ご指摘の選挙結果からは、大きな流れが生まれたようにも見えますが、国内の事情はそこまで変わっていなくて、ロシアや中国、アメリカのトランプ政権の動きといった対外的な要素への不安が高まっていると、個人的には感じます。

世の中のルールが結構簡単に破られることを目の当たりにし、このゲームに生き残れるのかという危機感が人を動かした。ただ、政治はあまりにも目先のことしか見えていない。

「ルールを破っても大丈夫」という状況ができない方向に進めなくてはいけないのに、その状況下にあるから、自分たちがルールを破ることに対しての対抗策として、一番効果がある手立てをその場しのぎで講じている。

その先にあるのは破滅でしょう。政治が今の動きになっている事情も理解はできますが、ここで力を得た為政者が、もっと先を見据えて本質的な解決方法や枠組みを模索してほしいと願うばかりです。

『コンクリートの船』を描く2つの動機

ーーロシアのウクライナ侵攻など、世界中が近年にない不穏な空気に包まれていることと、過去の戦時下を描く『コンクリートの船』を世に出すことには、つながりがあるのでしょうか。

この作品を描いた動機は2つあります。まず、コンクリートの船から受けた衝撃を物語として伝えたいということ。

もう1つは、その背景には戦争があり、自分があの戦争をどう思っているかを考えたときに、前述のようなグラデーションはありながらも国民全員に責任があり、この先の有事の際には、われわれにもその責任があることを考えてほしいという思いです。

ただ、後者を全面に押し出してしまうと、物語のダイナミズムを阻害してしまう。その足かせにならないように、あの時代に起きていたことを伝えたい。そういったことを何回も何回も繰り返し考えながら描いてきました。

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