京大在学中にデビュー"60歳漫画家の原点"。「将来はエリートになると思っていた」が、学費のために執筆。『コンクリートの船』への思いも語る
ーー『コンクリートの船』は、太平洋戦争末期を舞台に、鉄鋼資材の不足からコンクリートを原材料にする船の開発に携わった人々の数奇な運命を描きます。身の回りの出来事や家族の絆を描いてきたこれまでの作品とは、カラーが異なるように感じます。
2009年くらいに『続・星守る犬』のロケーションをしているときに、広島県呉市安浦町で防波堤として現存しているコンクリート製の貨物船『武智丸』を見て、そのインパクトに圧倒されました。
そこから興味を持ち、この船が作品になるイメージがまずあって、広島で生活しているなか、そのコンクリート船のニュースを見たり、その成り立ちを調べたりしているうちに、本格的に描こうと考えてプロットにしました。それから4年かかって、ようやく作品の形になって連載がスタートしたのが昨年です。
ーー戦時中に造られ、現在は防波堤になっているコンクリートの船を見て、どのような物語にして何を伝えようと考えたのですか。
鉄鋼が不足した戦時に、日本の技術力で当時は考えられなかったコンクリートの船を作ろうとした挑戦があり、加えて、それを製造した会社の社長は、軍との合弁事業により、従業員を徴兵から守るために引き受けたことを知って、これはおもしろい物語になると感じました。
戦後80年を経て、いまなお船の形をとどめているコンクリートの船が、どのような経緯でどのような人たちによって造られたのか。その船の物語を描きたいと考えました。
経営者の矜持と責任の取り方
ーー主人公の武田社長は、企業経営者でありながら研究者でもあり、激動の戦時下で新たな技術を開発して会社を守りますが、それ以上に従業員を大切にします。
自分の手の届く範囲の幸福を最大限追求する経営者であり、そういう人は時代にかかわらず、必ずいます。一方、僕がもうひとつ武田社長に対して思っていたのは、戦争責任があるということです。
個人的な考えですが、戦争責任は一般国民にもすべからくある。ただ、正しい情報が与えられず、目を閉ざされた状況にあれば、免責される。その責任にはグラデーションがあって、武田社長のように海外に渡って実情を見ていた人には、それなりの責任が生じる。
その責任を取るためにも、彼は自分の近くの人を死なせないように生きないといけないし、誰かがコンクリートの船に乗って南方の戦地に向かわなければならないときには自ら行きます。
経営者としての矜持と、人としての責任の取り方を合わせて描いています。



















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