サステナブル経営

社会的課題の解決が企業価値の向上につながる

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縮小

自動車は、保有台数が国民2人に1台の水準に達すると、ほぼ飽和状態になります。そうなると廃車した分しか、新車が売れない状況になります。日米などの先進国はたいていすでに飽和の水準に達しています。中国は、数年前まで100人に2台程度の水準でしたが、今は100人に10台を超えています。おそらく自動車マーケットが飽和するまでにこれから先10年もかからないでしょう。

中国は今、深刻な公害問題に直面しています。1960年代の日本がそうでした。しかし公害問題は多くの先進国が経験し、解決してきた歴史があります。日本が公害問題に直面したときは前例がありませんでしたが、中国には日本などのお手本があります。したがってかつての日本ほどには時間をかけず、この問題を解決することができるでしょう。と同時に中国もこれからは先進国的な課題にどんどん直面していくことになるのです。

物量的に飽和した状態になれば、企業活動の相当な部分が、物量の供給からサービスに移っていきます。サービス、あるいはそれに付随するモノづくりでの社会的課題が、新しいビジネスになっていくのです。この点については今、盛んに議論しているところですが、たとえば健康、あるいは自立支援という分野は間違いなく大きな産業になっていくでしょう。旅もそうですね。学びも大きな産業になる可能性があります。上から教える教育ではなく、自ら学ぶという意味での学びです。

目指すべきは「プラチナ社会」

このとき一つのキーワードになるのは、アクティブシニアです。これまでは、15歳から65歳までが生産年齢人口といわれていました。しかし高学歴化が進んだ結果、先進国では15歳で働いている人はごくわずかです。これからの生産年齢人口は20歳から75歳くらいになるでしょう。少なくとも日本では、75歳くらいまで働くのが当たり前になっていくと思います。単純な話、そうしないと年金制度が維持できないからです。だから健康産業や自立産業が大きなビジネスになるのです。

アクティブシニアの再教育も、大きなビジネスになるかもしれません。語学力とかITスキルに優れたシニアはたくさんいます。そういう人たちを再教育して、教育現場に入ってもらうのです。

物量的に飽和した社会になったとは言え、途上国ではまだ物量を必要としています。また先進国も、物量的豊かさが必要なくなるというわけではありません。物質的な豊かさを維持しつつ、トータルなクオリティを高めていく。私はそれを「プラチナ社会」と定義しています。そして、サステナブル経営とは、「プラチナ社会」を目指していく経営だと考えています。

日本は公害問題を完全に克服してきた経験と技術を持っています。自動車の省エネ化などでも、世界をリードしてきました。日本の科学技術のレベルは世界でも非常に高い。日本人のノーベル賞受賞者はこれからもどんどん出るでしょう。日本人も日本の企業も、自信を持っていいと思います。

ただ心配なのは、議論を避ける日本の風土です。欧米では激しい議論をします。ほかの人と同じようなことしか言わない人は尊重されません。ところが日本では、空気を読むという風土がある。若い人が独自の意見を言うと、生意気だとされる。画一的なものを大量につくって売れる時代にはそれでもよかったのですが、今は自由な視点で話し合っていかないと新しいものが創造できません。この風土を改革しなければ、イノベーションもブレークスルーも生まれません。

日本の企業がCSRとして社会的課題に正面から取り組み、プラチナ社会を実現していくためには、もっと自信を持ち、先頭に立つ勇気を持つことが必要なのです。

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