国内タカ派に求められる『大国日本』という幻影からの脱却、対中姿勢を誤らないために必要な世界観と国家像の構築が必要だ
歴史的に中国と何度も国境で武力衝突を繰り返してきたインドの外交官たちは、筆者の取材に対し、「インドは3000㎞以上も中国と国境を接しているため、無用な緊張対立を避けざるをえない」とつねに語っていた。日本も本質的には同じ立場にある。
最悪のシナリオは、日本と中国が再び戦争に突入し、多くの犠牲者を生むことだ。緊張が高まる中、自衛隊と中国軍の間で偶発的なアクシデントが起きれば、不信感が一気に武力衝突へ転化するリスクは現実的に存在する。だからこそ、両国の政治指導層には、日中戦争を何としてでも避けるという強い意思が求められる。必要なのは、まず緊張をエスカレートさせないことだ。
ナショナリズムが高める偶発衝突のリスク
東南アジア諸国の対中外交は、日本に多くの示唆を与える。フィリピンはアメリカ軍との合同演習を重ねる親米路線を取る一方、マレーシアは米中対立に巻き込まれないよう中立を維持している。

マレーシアの外交官は筆者に、「中国は最大の貿易相手国であり、経済的結びつきが極めて強い。われわれは小国で、中国に正面から対立できるほど強くない」と語った。
国力差を冷静に認める。大国間対立に巻き込まれない。経済的現実を優先する。無用な緊張を避ける――。日本と同じミドルパワーに位置づけられるマレーシアが日本に必要な世界観を示している。
添谷芳秀・慶応義塾大学名誉教授は著書『日本の「ミドルパワー」外交――戦後日本の選択と構想』(ちくま新書、05年)の中で、日本はミドルパワーとしてのアイデンティティーを再確認して出直すべきだと訴えた。
添谷氏はアジア、いや世界の中で台頭する中国と同じレベルで競い合うのではなく、オーストラリアや韓国、カナダなど他のインド太平洋地域諸国と連携するという視点から長期の戦略を構想すべきだと訴えてきた。





















無料会員登録はこちら
ログインはこちら