国内タカ派に求められる『大国日本』という幻影からの脱却、対中姿勢を誤らないために必要な世界観と国家像の構築が必要だ

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軍事面でも日中の差は明白だ。中国の国防費は25年時点で、日本の防衛予算の4倍以上に上る。しかも、中国が公表している国防費は、実際の軍事支出の一部にすぎないとの見方が根強い。人員面でも、中国人民解放軍が約200万人規模の現役兵力を有するのに対し、自衛隊は現員で約22万人にとどまる。

また、中国は核戦力の増強を急速に進めている。25年9月に北京で行われた軍事パレードでは、地上発射型大陸間弾道ミサイル(ICBM)、潜水艦発射型大陸間弾道ミサイル(SLBM)、空中発射弾道ミサイル(ALBM)といった、核弾頭搭載が可能な陸海空の「核の三本柱」を内外に誇示した。一方、日本は非核三原則を堅持しており、核戦力という選択肢を持たない。

こうした圧倒的な国力差を直視せず、国の指導者が軍事的なパワーゲームの文脈で中国をわざわざ刺激するような言動を取ることは、戦略的合理性を欠いた危険な行為と言わざるをえない。

日本がアジアのナンバー1だった20世紀こそ異常

より長い歴史の視点に立てば、20世紀の100年間、日本がアジアのナンバーワンであったこと自体が、むしろ東アジアにおける「異常な状態」だったと捉えるべきだろう。清朝末期から20世紀前半にかけての中国の深刻な混乱と、日本の急速な近代化。この歴史的条件が重なったことで、地域の力関係に一時的な逆転が生じた。

現在、中国が再び地域の中心的存在として台頭した状況は、歴史という大きな振り子が本来の位置へ戻りつつある過程、すなわち東アジアが「通常の状態」に回帰している姿と見ることができる。

好むと好まざるとにかかわらず、この冷徹な世界観と、日本が置かれている立場を受け入れられるかどうかは、今後の対中政策を根本から左右する。感情や虚勢ではなく、現実を踏まえた戦略的リアリズムに基づかない対中姿勢は、日本を誤った方向へ導きかねない。

国内のタカ派による言説は、しばしば国民感情を鼓舞する。しかし、過度なナショナリズムに基づく強硬姿勢は、合理的で冷静な危機管理を困難にする。また、さらなる対中強硬姿勢は、日本自身にとって新たな戦略的リスクをはらむ。大国間の取引を優先し、中国とのグランドバーゲン(大取引)を模索するトランプ政権の下では、日本が想定してきた対中包囲の前提が崩れ、結果として「ハシゴを外される」可能性も否定できないからだ。

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