国内タカ派に求められる『大国日本』という幻影からの脱却、対中姿勢を誤らないために必要な世界観と国家像の構築が必要だ

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テレビのニュースや情報番組では、アメリカ、中国、日本を並べた図が頻繁に使われる。3カ国が対等に配置され、「米中対立の中で日本はどうするのか」とよく語られる。しかし、残念ながら、これは国際政治経済の実像から大きく乖離した表現だ。

アメリカと中国は、軍事、経済、技術、外交のあらゆる領域で世界秩序の行方を左右する明確な「大国」(グローバルパワー)である。一方、日本はその範疇には属していない。

「米中日同列」というメディアの錯覚

かつて中曽根康弘元首相が位置づけたように、日本は核を持たない「非核中級国家(ミドルパワー)」であり、その立場は過去も現在も変わっていない。それにもかかわらず、国内では日本を無意識のうちに米中と同格の存在として扱う言説が、なお根強く残っている。

この「大国日本」という虚像は、高度経済成長期から世界第2位のGDP(国内総生産)を誇った時代の成功体験に深く根差している。しかし、現実と乖離した自己認識は、ときに外交や安全保障政策の判断を誤らせる。大国意識に突き動かされた政策は、国内向けの自己満足にとどまるならまだしも、国家全体を危うい方向へ導きかねない。

現実を直視するためには、感情ではなく数字を見る必要がある。1980年、日本の名目GDP(国内総生産)は中国の約4倍に達していた。バブル経済の絶頂期である90年には、その差は約10倍にまで拡大した。中国の人口が日本の約10倍であることを考えれば、当時の日本人1人当たりのGDPは、中国人100人分に相当する計算になる。この圧倒的な経済格差が、日本社会に強固な「大国意識」を刻み込んだ。

しかし、21世紀に入ると状況は一変する。中国経済の急成長により日中のGDP比は再び4倍程度に縮小し、10年にはついに逆転された。現在では、中国のGDPは日本の約5倍に達している。わずか40年の間に、日本は「10倍の差で中国を引き離していた側」から、「5倍の差をつけられる側」へと立場を大きく変えたのである。

なお、日本は中国に抜かれるまで、長らく世界第2位の経済大国と位置づけられてきた。しかし、26年にはGDPでインドに抜かれ、世界5位へと後退する見通しである。

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