週刊東洋経済 最新号を読む(5/23号)
東洋経済オンラインとは
政治・経済・投資 #新競馬好きエコノミストの市場深読み劇場

2026年は変化の時代が終わり、すべてが変わり、「ついにAIが資本主義を滅ぼす年」になる

16分で読める
  • 小幡 績 慶応義塾大学大学院教授
2/8 PAGES
3/8 PAGES
4/8 PAGES
5/8 PAGES
6/8 PAGES

これが、第3段階の資本主義における搾取である。それは、イノベーションという名による搾取だ。私は、今回、これを「“起業家資本”による搾取」あるいは「イノベーションによる搾取」と名付けたい。

つまり、目新しい、刺激的な、見たことないものを、値段、相場観のわからない、初見の異国の消費者たちに売りつけるのである。直接的な価値の搾取である。

欧米的な価値観、文化の下では遅れている社会に赴き、彼らが目新しい(目くらましの)製品・サービスに驚き、刹那的で短期的な刺激により、正確な価値の判断ができなくなっているときに、興奮に乗じて高い価格をつけて売り抜ける、価値と価格のギャップによる価値搾取である。このプロセスにより、本質的には価値があるが、市場価格には反映されない伝統的な文化を奪っていくのである。

ここでいう価値とは、持続的に価値を持ち続けるものである。不変の価値である。しかし、価格はその瞬間の市場で決まる価格である。その裏付けにある価値とは、刹那的な価値である。今、欲しい、という衝動に駆られて支出する場合の、消費者が消費または所有によって得る価値である。

資産価値でいえば、今持っていることによって、明日売って儲けることができる可能性のある価値、オプションヴァリューである。地上げバブルのときに、地上げされかかっている地域の一部の土地を持たなくては、地上げバブルに乗れないから、そのときに地上げ用の土地を買う投機家にとっての価値である。

イノベーションは「時間との競争」

この話は一般にはむつかしすぎるかもしれないから、消費者の価値に戻ろう。今、はやりのファッションを今日買うことには価値がある。しかし、来年、流行遅れになったその衣服は価値がない。しかし、今年買いたいのだから今年は価値があるし、その価値に見合った価格がつく。しかし、来年になると、なんでこんなものを買ってしまったのだろうと後悔する。来年、転売しようとしても売れない。

資本主義末期におけるイノベーションの価値とは、このような価値である(資本主義前半には、これとは違う技術革新に基づく、継続的な価値のある価値があったが、末期には段々そういうものは減ってくる)。

したがって、イノベーションとは時間との競争なのである。早い者勝ちなのである。一瞬でも先にライバルを出し抜いて製品化し売り出す、流行させることが重要なのである。まさに時間との戦いなのである。時間「差」が価値をもたらすのである。先行者利益そのものである。というより、先行したことだけによる利益である。

次ページが続きます:
【搾取メカニズムの本質は「時間による搾取」】

7/8 PAGES
8/8 PAGES

こちらの記事もおすすめ

あなたにおすすめ

政治・経済・投資

人気記事 HOT

※過去1週間以内の記事が対象