投資活動としての特許出願で企業は強くなる 選択と集中を導く「特許マーケティング」とは

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所長 龍華明裕氏
「グローバル市場で勝ち抜くには、特許出願を投資活動として設計する発想が不可欠」と指摘するRYUKA国際特許事務所所長の龍華明裕氏。特許を経営資源として生かし、収益と競争力を生む仕組みへと変えるための手法として「特許マーケティング」を提唱している。

グローバル競争を勝ち抜く出願国の選び方とは

投資としての特許出願では、まず出願国の選び方が重要と、龍華明裕氏は指摘している。

所長 龍華 明裕氏
所長
龍華 明裕

「A国で製品を販売するからA国で特許を出して他社を排除するといった発想により、自社の販売地域で出願するという考え方もあります。しかしこの場合、他国では技術を自由に使うことができるので競合会社の成長を助長するおそれがあります。また相手からの特許訴訟に備えるには、攻撃に対抗できる特許も必要です。仮に自社がアジアで、競合が欧米で高いシェアを持つ場合、アジアで取得した特許では競合からの訴訟に対抗できません。競合の市場に特許の布石を置くことも大切なのです」

では、グローバル市場での訴訟リスクに対抗する力になり、収益を生む資産とするためには何が必要なのか。

マーケティング思考の導入で出願を投資と捉える

「そのためには、特許出願を未来への投資と捉えることが重要です。投資と位置付ければ、回収(Exit)の方法・額と時期を想定しなければなりません」

どの発明を、どの国で、どのような目的で権利化し、将来の収益につなぐのか。出願の段階から、その全体像を設計し、知財を経営資源として活用する道筋を示すフレームワークとして龍華氏は「特許マーケティング」を提唱している。

「製品を開発する際には、マーケティングが行われますね。市場規模や成長率、競合の強みや価格を分析し、勝てるポジションを見極めてから開発に着手します。特許出願も同じプロセスを踏むべきであり、自社が競合会社等の中でどのような特許ポジションを取るかを想定したうえで出願する必要があります」

下の図式は事業利益と特許の強さ、両方のバランスを考慮した4象限のマトリックスで、特許の出願目的をマッピングするものだ。この図式に基づいて知財戦略を練ることができる。

利益と特許の強さ、両方のバランスを考慮した 4象限のマトリックス

①他社の排除(右上領域)

「自社の事業利益も特許も強い右上の領域を目指せる場合は、他社排除を目的とした特許群を形成すべきです。この特許群は、まず自社の市場に出願し、必要に応じて他社の生産拠点にも出願しておくことが求められます」

②ライセンスによる収益化(左上領域)

「強い特許群を作れるものの、将来的に他社利益のほうが大きい場合は、ライセンスによる金銭化を考慮できます。この領域の特許は相手に『欲しい』と思わせる必要があるため、相手の市場に出願することが基本となります。OEMやライセンス生産など相手製品と自社製品が重なる場合には、自社製品をカバーする特許でも有効に機能します」

③クロスライセンスによる防衛(左下領域)

「他社利益が大きくて、自社特許が弱い場合は、積極的に権利を振りかざすことは危険です。相手の強い特許に反撃される可能性があるからです。ただし、少数の特許を確保するだけでもクロスライセンスの材料となり、防衛手段になります。この場合は相手の市場や生産拠点に出願し、特許は相手製品をカバーしていることが重要です」

④訴訟リスクへの備え(右下領域)

「自社利益が大きく、他社特許も強い場合は訴訟リスクが高まります。とくに米国のNPE(Non-Practicing Entity/特許権を保有し行使するが自ら製品を持たない主体)が相手の場合、自社特許での反撃は難しく、高額な損害賠償請求を受けやすくなります。その際は、製品が多数の特許に依拠していることを示し、相手特許の寄与度が低いと主張することが有効です。これには、自社の市場で、自社製品を幅広くカバーする特許を確保しておくことが重要です」

このように、製品が4象限のどこに位置しうるかを検討することにより、特許の活用方法と、そのための出願国を明確にすることができる。

知財活用の発想転換が未来を決める

「事業の選択と集中」も、特許マーケティングと一体と龍華氏は指摘する。幅広い技術を使う製品では他社の特許も必要なので右上の領域を維持しにくい。すると特許権を行使したときに相手からの反撃に遭いやすいので権利を行使しにくく、他社排除が難しい。

「そこで例えば、携帯電話等の最終製品ではなく、その中で自社が最も強い部品に特許と製品を集中すると右上の領域を確保しやすくなります。また周辺技術を開放することで最終製品の競争を促進して価格を下げることができます。すると自社の技術価値を維持しつつ販売数を増やして高収益を得られます」

したがって事業の選択と集中では、特許マーケティングの分析が必要という。

特許を出願すると技術が公開される点にも注意が必要だ。

「特許は、日本語で出願されても、機械翻訳により各国の言語で読まれるようになりました。このため自社の市場だけに出願すれば、他国では単に競合を利し、成長した競合が、やがて日本企業の市場に参入する場合があります」

これを防ぐには、自社以外の市場にも特許を出願し、それを活用する戦略を描いておく必要があるという。「そこで例えば、自社が市場参入しない米国では、左上の領域を目指して特許群を形成しライセンス収入を図るという戦略を明確にすることができます。

そのための出願投資が不足する場合は、資金調達するか、最初から出願投資をせず日本にも出願しないという選択肢もあります。

特許マーケティングを導入することによって、まず事業と特許出願の可能性とリスクを洗い出し、どの国で誰がどのように権利を行使してくるかを想定する。そのうえで、自社がどの市場で優位性を確保し、どこでライセンスの主導権を握るのかを議論する。こうして企業全体の知財戦略が変わっていくのです」

特許マーケティングを活用することで、収益構造も大きく異なっていくだろう。ものづくりや技術に優れた日本企業にとって新たなインパクトを与える可能性がある。

「特許マーケティングは、研究開発・知財・経営・投資家の間に共通言語をもたらし、技術を生かした経営戦略を後押しします。RYUKA国際特許事務所は国際的な知見を背景に、クライアントと共に戦略を描き、実行へ導くことを使命としています。出願代理にとどまらず、未来を切り拓く知財戦略の設計者として、特許を生かす仕組みを提供し、企業の競争力強化と持続的成長に貢献します」と龍華氏は力強く結んだ。

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