ビル管理の常識を覆す「中央監視クラウド」の衝撃 サーバーを「持たない」選択が起こす劇的な変化

世界の超高層ランドマークの90%が顧客
ジョンソンコントロールズは約140年の歴史を持ち、世界150カ国以上に拠点を持つスマートビルソリューションのグローバルリーダーだ。日本でも、50年以上にわたって計画、設計、施工、保守、改修などビルのライフサイクル全般を支援している。
サービス推進本部
デジタルソリューション担当部長
地田 清和氏
「空調制御と省エネルギーに強みを持ち、それを生かしたビル管理・中央監視システムを長年にわたって提供してきました。世界の超高層ランドマークの90%以上は当社のソリューションを導入しています」と説明するサービス推進本部 デジタルソリューション担当部長の地田清和氏は、日本と海外のビル管理はIT化の面で大きく異なると話す。
「特に米国では、15年前の時点ですでに企業のITインフラやインターネット環境に接続したビル管理・中央監視システムが定着していました。そのため、設備管理部門ではなく、IT部門が管理する企業が多く、早くから『サービスとしてのビルオートメーションシステム』へのニーズがありました」
中央監視クラウドが選ばれる3つの理由
そんなニーズに応えるべく、リリースされたのが「Managed Metasys Server」だ。すでに北米やアジアの一部地域で先行して提供が開始され、多くの導入実績がある。
支持を集める理由として、「セキュリティ・拡張性・施設運用コスト最適化」の3点が挙げられると、北陸営業所の木戸恒星氏は話す。「1つは、常に最新の状態を維持できることです。定期的なソフトウェアパッチ適用やアップデート、タイムリーなウイルス対策が行われるため、セキュリティが向上します」
専門スタッフが24時間365日体制でシステムを監視しているため、緊急時でも高速でデータ復旧が見込め、BCP対策としても効果的だという。
「2つ目は、柔軟性とスケーラビリティの高さです。いつでもどこでも、どのようなデバイスからでも管理できますので、運用効率性が向上します。スマートビルや建物の群管理の発展性にも今後期待することができ、エリアマネジメントが容易になります」
そして3つ目は、サブスクリプション形式であることだという。大きな初期投資や突発的な故障対応を回避し、ライフサイクルコスト全体の最適化を実現することで、導入企業の企業価値向上や持続可能性の確保に貢献する。
オンプレミスの中央監視が抱える課題とは
従来のビル管理の常識を覆す「Managed Metasys Server」。その国内導入第1号として決定したのが、富山県に本拠を置く北電産業が所有する富山駅前の商業施設「アーバンプレイス」だ。
北陸電力グループの一員として、多数の自社ビルの設備管理や整備を手がけている同社。導入のきっかけについて、ビル・施設事業部 設備運営担当部長の浦井康広氏はこう説明する。
「長年にわたってジョンソンコントロールズのビル中央監視システムを活用してきましたが、機器更新で大きくコストがかかることに課題を感じていました。テナントサーバーのクラウド化をご提案いただき、併せてビル中央監視システムも同様にできないかと相談したところ、新たにManaged Metasys Serverの提供開始を準備していると聞いたのです」
加えて、クラウド化によって遠隔監視が可能になる点も魅力だとビル・施設保守センターの綾川卓洋氏は話す。
「人手不足の問題が解消できるだけでなく、災害時の対応がスムーズになることも期待しています。アーバンプレイスの保守センターは地下にあるので、停電だけでなく、水害によるデータ喪失のリスクもあります。しかし、Managed Metasys Serverならば物理的にサーバーがないことの安心感がありますし、タブレットなどを持っていればどこでも状況が把握できるので、心配が減りました」
クラウドで切り開く、ビル管理の未来
遠隔監視が可能になることで、複数の自社ビルの中央監視をひとまとめにすることも考えられている。
「現在、それぞれのビルで独自に運用していますので、一括管理することで無駄が可視化され、運用の効率化やエネルギーコストの削減が図れるのではないかと期待しています」(浦井氏)
コスト抑制・省人化のさらなる推進のため、Managed Metasys Serverの改良も進めると、地田氏は話す。
「当たり前のように安全性と快適性が保たれていますが、ビル管理はやるべきことが無数にある大変な業務です。Managed Metasys Serverによるクラウド化で、中央監視システムの保守・メンテナンスの手間を当社にお任せいただくことで、データの活用やより注力されたい領域に集中できるよう支援していくのが当社の役割だと思っています」
人手不足も災害対応も、個社ではなく社会全体の課題だ。また、エネルギーコストを削減することは、省エネルギーの推進にもつながる。「だからこそ、ビル管理の変革支援を通じて、持続可能な未来の構築に貢献したい」と強調する地田氏。ビル中央監視のクラウド化がスタンダードになるのも、決して遠い日ではなさそうだ。




