米中対立はマレーシアに綱渡りを強いている ASEAN拡大国防相会議で起きたこと

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マレーシアのある高官は今週、同国が中国寄りにも米国寄りにも見られてはいけないとし、「バランスを取らなければいけない」と匿名を条件に語った。

ヒシャムディン国防相も今週、同地域外の国々が緊張を高めないことを望んでいるとし、「われわれは中国とも米国とも関わり続ける。実際に両国と関わっているという事実こそが、両国への明白なメッセージだ」と語った。

中国の哨戒活動

同地域で高まる安全保障問題、とりわけ中国の海洋進出にマレーシアがもっと注意を払うよう、ここ数年訴えてきたと、米国など西側の外交官らは語る。

中国軍の艦船は、マレーシア領ボルネオ島のサラワク州沖にある曾母暗沙(同ジェームズ礁)付近で定期的に哨戒活動を行っている。

衛星画像を見た外交官や専門家は、中国の巡視船がジェームズ礁の北方に位置する南康暗沙(同南ルコニア礁)でも半永久的なプレゼンスを維持しているとみる。

「広範な安全保障問題、特に南シナ海におけるマレーシアの役割と重要性は、戦略上ますます高まっている」と、ある西側の外交官は指摘。「重要なのは、マレーシアが先頭に立ち中国と対立することを期待するのではなく、同国が正しいことを行うよう促すことだ」と語った。

だが、当のマレーシアは中国を疎遠にしようとはしていない。同国はマラッカ海峡で9月、中国海軍と合同軍事演習を実施した。

マレーシアは伝統的に、軍事的には米国と、経済的には中国と関係を築いてきたと、ラジャラトナム国際研究院(シンガポール)のシニアフェロー、Oh Ei Sun氏は指摘。

しかし、9月に行われた中国との合同軍事演習や、米国などが主導する環太平洋連携協定(TPP)交渉への参加は、マレーシアと米中との関係がいかに深化しているかを如実に示すものだと同氏は説明。「両国との間で綱渡りを強いられるため、ますます困難な仕事となる」との見方を示した。

(Yeganeh Torbati記者、翻訳:伊藤典子 編集:下郡美紀)

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