中小企業と大企業「企業年金の格差」を埋める方法 お金の福利厚生「はぐくみ企業年金」が持つ意義

中小企業の多くに退職年金制度がない
大企業との格差が埋まらない現状
大企業では一般的に、企業年金を中心とした福利厚生制度が十分に整備されている。しかし中小企業はそうではなく、大企業との経済格差は広がっているのが現状だ。ベター・プレイスの代表取締役社長、森本新士氏はこう語る。
「日本企業のうち、中小企業の割合が99.7%を占めています。しかし従業員数30〜99名の中小企業では、退職年金制度の普及率は16%しかありません※2。30名未満の企業についてはデータが存在しませんが、ごく少数にとどまっていると考えられます。
企業年金は、さまざまな税制優遇を受けられるすばらしい制度。その恩恵を、多くの中小企業の社員が享受できていません。
例えば、年代別の老後不安は、20〜50代の各世代を通して『お金』が1位です※3。勤務する企業の規模や住んでいる地域によって大きな経済格差が生じ、それが不安につながっているのではないでしょうか。この深刻な社会課題を解決したいと考えました」

代表取締役社長 森本 新士 氏
中小企業と大企業の経済格差。森本氏が、事業を通してこの社会課題を解決したいと考えるのはなぜか。
「私自身が幼少期に経済的な苦労を経験したことや、弟が父から受け継いだ商売がうまくいかずに自己破産せざるをえなかったことが大きく影響しています。こうした原体験が『市井に生きる人々の資産形成を応援する』というライフワークにつながっています。
私は生命保険会社に勤務していた頃、たくさんの尊敬する先輩方に出会いました。その中でさわかみ投信創業者の澤上篤人さんから教わったのが、『ファイナンシャル・インディペンデンス(経済的自立)ができていれば、自由な生き方が可能になる』ということ。この発想に衝撃を受け、もっと多くの人が経済的な自立をできるように役立ちたいと考えるようになりました」
こうした経験を経て、中小企業に勤める全国のビジネスパーソンがお金の心配をすることなく、より自分らしく働ける社会をつくろうと決意したという。そして2018年に森本氏が設立したのが、中小企業向けの“お金の福利厚生”こと「はぐくみ企業年金」だ。

「解約率約0.35%」の実績が示す導入企業の高い満足度
「はぐくみ企業年金」は、厚生労働大臣の認可を受けて設立された企業年金制度であり、「確定給付企業年金(DB)」に分類される。導入する中小企業には、どのようなメリット・デメリットがあるのだろうか。
「導入法人にとってのメリットは大きく3つあります。
1つ目は、大きな負担なく企業年金制度を導入できる点です。企業年金制度の導入時には、複雑な制度設計を行い複数の手続きを行う必要があるため、高いハードルがあるとされます。しかし『はぐくみ企業年金』なら、独自に開発したDXシステムを使用することで導入の手間を減らすことが可能です。
2つ目は、人材定着への貢献です。従業員が『はぐくみ企業年金』に加入することで、将来への安心が生まれ、精神的にも経済的にも安定して働けるようになります。福利厚生制度が充実することで、離職率の低下や人材定着への効果が期待できます。
3つ目は、副次的な効果となりますが、法人側のコスト負担軽減です。加入者が負担する掛け金が給与扱いから外れることにより、税金と社会保険料の負担が減ります。
社会保険料は労使折半が基本ですから、従業員の負担額が軽減されることで、結果として、導入法人の負担費用も軽減されます」
一方で、デメリットも存在する。オンライン上でできるとはいえ、事務の負担が生じることには違いなく、中小企業にとっては負担となる。
「もう1点、元本割れのリスクです。確定給付企業年金には加入者に約束する利回り(予定利率)が設定されており、『はぐくみ企業年金』の場合は現在0.3%(25年度)に設定されています。この予定利率を下回った場合、事業主が不足分を補填しなければなりません。
ただし、『はぐくみ企業年金』ではこれまでに、予定利率や元本を割り込んだことは一度もありません。2024年度の運用利回りは1.78%で、予定利率を上回りました。
導入いただいた企業からは『従業員の安心感やエンゲージメントが高まった』『定着率の改善につながった』という声が多く寄せられています。約0.35%(25年5月末時点※4)という解約率の低さが、満足度を表しているのではないでしょうか」
福祉業界で活躍するエッセンシャルワーカーたちのためにスタート。今はあらゆる業種の中小企業に拡大
経営者だけでなく、従業員(加入者)にも多くのメリットがある。
「1点目は、上述のとおり加入者側には元本が保証されており、利息分と合わせて受け取れること。2点目は、掛け金が給与扱いから外れるため、税金や社会保険料を軽減しながら資産形成できること。3点目は掛け金を1000円単位で年2回変更できることです。
4点目は、自分で投資先を選定する手間がないこと。5点目は、受け取れるタイミングが柔軟であることです。高齢期の受け取りが基本ですが、退職時や育児・介護休業時、休職時に受け取る選択も可能です。
もちろんデメリットもあります。社会保険料の負担が減ることにより、将来受け取る年金や給付金の金額が減少します。こうした点についても、加入者一人ひとりに説明しています」
現在、「はぐくみ企業年金」の加入者は10万人を超え、評判も上々だ。「ようやく、お金のことを考える煩雑さから解放された」「将来の不安が減り、安心して暮らせるようになった」という声が多く寄せられている。
「『はぐくみ企業年金』は当初、保育や介護などの福祉業界で働く方々を対象にスタートしました。これらの業界は一般的に給与水準が高くなく、経済的に不安を抱えながら働いている方も多くいます。
社会の基礎を支えているエッセンシャルワーカーの方々に支持され、『はぐくみ企業年金』の導入が相次いだことから、他業界にも裾野を広げ、対象範囲を拡大してきました」
「お金の福利厚生」の力で安心して働き、暮らせる環境を

手続きの簡素化に大きな役割を果たしているのが、同社が独自に開発した企業年金DXシステム「はぐONE」だ。加入時の書類申請を90%以上DX化し、Web上で対応できるという便利な仕様である。
「『はぐONE』は、加入企業の事務手続き負担を減らすと同時に、当社の運営負担の軽減にも寄与しています。当初は申請書類の50%以上に不備がありました。しかし『はぐONE』の導入以降、不備率は約10%へと大幅に減少しました。加入者にとっても、スマートフォンで掛け金申請や積立金の確認ができるなど、使い勝手のよさがメリットです」
幅広い加入者に支持されるサービスに育った「はぐくみ企業年金」を通じ、森本氏はどんな未来を描いているのか。
「加入者を100万人、200万人と増やし、もっと多くの方に安心して暮らせる環境を提供していきたいです。とくに近年、金利のない世界から金利のある世界へ変わってきているため、加入者の方々がさらに恩恵を受けられるようにと考えています」
大切な従業員に安心して長く働いてもらうためにできることは何かと悩む経営者は多い。そうした方の参考になるのが、森本氏が6月に上梓した『お金の心配がなくなる未来のつくり方~共助思考で挑む、誰もが尊厳をもてる世界へ』だ。
森本氏の半生から、「はぐくみ企業年金」が誕生した経緯や急成長の理由、そして企業年金の社会的意義などについて詳しく書かれている。従業員の経済的不安を軽減したい中小企業の経営者の参考になるのではないだろうか。
>福祉はぐくみ企業年金基金(通称:はぐくみ企業年金)の公式HPはこちら

※2出所:厚生労働省「DC制度の環境整備」
※3出所:金融庁 金融審議会 市場ワーキング・グループ報告書「高齢社会における資産形成・管理」
※4解約率=過去1年間の脱退事業所における加入者数÷1年前の加入者数
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