ふるさと納税の可能性を広げるAmazonの一手 自治体と販売事業者をつなぐ新たな仕組み

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ふるさと納税の返礼品
「Amazonふるさと納税」を運営するAmazonが、このほど開始したプログラム「Amazonふるさとツナグ」。自社の商品を返礼品として出品したい販売事業者と、返礼品を増やしたい自治体をつなぐ仕組みだ。ふるさと納税をより身近にし、地域経済と自治体、そして販売事業者の継続的な成長を後押しするこのプログラムは、どのように生まれたのか。担当者に聞いた。

寄付が日常になる。課題起点で新プログラムを開始

2000年に日本で事業を開始したAmazonは、「地球上で最もお客様を大切にする企業になること」を目指し、ショッピングサイトをはじめ多様な商品・サービスを提供してきた。購入者だけでなく、Amazon上で販売活動を行う販売事業者、取引先企業、地域のコミュニティ、配送パートナーなどさまざまな存在が「お客様」であるという考え方の下、中小企業支援や地域貢献活動を展開している。その一環として、24年12月に立ち上げたのが「Amazonふるさと納税」だ。セラーサービス事業本部 地域創生・ふるさと事業部 事業部長の田中彩音氏は、その経緯をこう語る。

「さまざまな地域貢献活動を行う中で、寄付者様と自治体様が共に地域の活性化を目指すという『ふるさと納税』の考え方に共感し、開始したのが『Amazonふるさと納税』です。日常的にAmazonをご利用いただく全国のお客様と自治体様をつなぎ、地域の魅力や活動をより多くの方に知っていただく機会をつくりたいと考えました。現在、1200以上の自治体様に参画いただいています」

アマゾンジャパン セラーサービス事業本部 地域創生・ふるさと事業部長 田中彩音氏
アマゾンジャパン セラーサービス事業本部 地域創生・ふるさと事業部 事業部長 田中彩音

Amazonふるさと納税の特徴は3つある。第1に、使いやすさ。寄付者は普段使っているAmazonアカウントから、いつものAmazonのサイトでそのまま寄付ができる。第2に、数千点の返礼品が最短翌日に届く。第3に、自治体と開発したAmazon限定返礼品。寄付者は新たな特産品や地域を発見でき、自治体は魅力を新しい形で発信できる。

「私たちがふるさと納税のサービスにおいて重視しているのは、寄付を通じた地域貢献を、より多くの方に身近に感じていただくことです。ふるさと納税で寄付されたことがない方にも、『Amazonでできるなら試してみたい』と思っていただけるきっかけを提供していきたいと考えています」

こうした理念をさらに進化させるなか、自治体や返礼品提供事業者のさまざまな実務を、Amazonが軽くできるのではないかと考えた。

「私自身、日本各地の自治体様を訪問してお話をする中で、新しく返礼品を扱う際には自治体様が汗を流して1件1件事業者様の元へ赴き、調整をされていると伺いました。一方で販売事業者様からは、返礼品を提供することに興味があっても、申請のやり方がわからなかった、自治体様個別のシステムへの対応や請求書のやり取りなどを考えると踏み出せなかったという声も聞きました」

作業を「とにかく簡単に」、価値創出を後押し

そうした自治体と販売事業者の生の声を生かし、さまざまな作業を「とにかく簡単にしたい」という思いから誕生したのが、「Amazonふるさとツナグ」だった。Amazonのショッピングサイトで販売中の自社商品を返礼品としても出品したい販売事業者と、返礼品を増やしたい自治体の間を“つなぐ”プログラムだ。

まずAmazonが販売事業者を自治体に紹介し、返礼品候補を申請する手続きを取りまとめる。自治体は必要に応じて詳細情報などを販売事業者に確認し、候補の採否を判断。採用したい場合は、通常どおり地場産品基準などの適合確認や総務省への申請手続きなどを行う。承認が下りたら、Amazonがサイト上の出品設定などをサポートする。

返礼品として出品した後の在庫管理も簡単だ。Amazonがショッピングサイトで長らく運用してきた「フルフィルメント by Amazon」(以下、FBA/Amazonが販売事業者の商品の保管・注文管理・発送などを代行するサービス)の仕組みを活用するためだ(※)。
※Amazonふるさとツナグの対象は、現在FBA利用の返礼品のみ。今後出品者出荷の返礼品にも拡大予定

Amazon ふるさとツナグの仕組み

自治体のメリットは「返礼品のリサーチが不要」「Amazonに出品する際の事務負担の軽減」「在庫管理が不要」などだ。新たな返礼品を自ら探す必要がなく、Amazonから紹介を受けられる。返礼品が総務省から承認された後は、既存のショッピング用のページを活用できるため、商品登録・画像登録・ページ作成など新規出品に伴う事務作業が不要(自治体による調整が必要な場合あり)。その後の管理業務も大幅に省ける。通常のFBAと同様、Amazonの物流拠点への納品は販売事業者、その先の受注・梱包・発送などはAmazonが行うからだ。返礼品代金の販売事業者への支払いも、Amazonがまとめて代行。寄付額は、自治体が設定する。

販売事業者のメリットは「既存の商品を簡単に返礼品としても出品できること」「在庫管理の負担削減」だ。候補商品の情報をAmazonに提出するだけで、その後の自治体への申請から出品設定までをAmazonが代行。相手の自治体が複数にわたる場合も、Amazonが取りまとめる。特筆すべきは在庫管理の簡単さだ。「Amazonふるさとツナグ」では、FBAで納品された在庫を、ショッピング用の商品としても返礼品としても出荷できるため、通常どおり物流拠点へまとめて納品すれば済む。在庫管理も慣れた管理画面でまとめて行うことができ、必要に応じて別管理も可能だ。自治体と請求書のやり取りをする必要もない。

そして、双方に共通しているメリットは「Amazon利用者との接点」だ。Amazonのサイト上では、ショッピング向けの商品と同じ物がふるさと納税の返礼品としても出品されている場合、商品詳細ページにふるさと納税ボタンが表示され、返礼品のページに簡単にアクセスできる。つまり買い物目的で商品を探しに来た購入者にも、返礼品という選択肢を紹介できるのだ。販売事業者から見れば、通常の購入者に加え、新たに寄付者との接点も生まれる。

Amazonふるさと納税

「Amazonふるさとツナグ」により、自治体は少ない負担で返礼品を豊富にできる。普段購入している商品が返礼品になっていれば、利用者は併せて寄付もするかもしれない。新しい返礼品は、寄付をしたことがない人が初めて寄付をするきっかけになるかもしれない。より多くの人にとってふるさと納税が身近になれば、寄付が拡大する。寄付が拡大すれば、地域がさらに活性化する……そんな未来をつくる手助けがしたい、と田中氏は言う。

「Amazonふるさとツナグは、Amazonがこれまでショッピングサイトなどを通じて磨き上げてきた仕組みや経験、テクノロジー、そして販売事業者様とのつながりの結晶です。今後もAmazonらしい、Amazonだからこそできる方法で、日本のふるさと納税を盛り上げ、さらなる地域貢献を目指していきたいです」

自治体・販売事業者・寄付者に確かな価値をもたらす「Amazonふるさとツナグ」。地域経済をより活性化させる原動力となっていくだろう。

⇒Amazonふるさと納税はこちら