プーチンのほうはトランプ政権側が提案した早期停戦・和平に応じる素振りはまったく見せていない。つい最近も「ロシア人とウクライナ人は元々同じ民族だ。その意味でウクライナ全土はわれわれのものだ」と帝国主義的論理丸出しの発言をした。
これに関連して、プーチンがトランプ側との間で、ロシアがイランの核兵器開発を容認しない立場を明確にする代わりに、ウクライナとの和平に応じないという取引を提案したとの説が出ている。
「今日のウクライナは明日の東アジア」
一方、日本にとっては、岸田前首相が訴えた「今日のウクライナは明日の東アジアかもしれない」との言葉が一層現実になる可能性が強まっている。北朝鮮がウクライナ侵攻に派兵したことでロシアとの軍事協力が深まっているが、最近、中国のロシアとの軍事協力が次第に明確になっているからだ。
ウクライナの英字紙キーウ・ポストは2025年6月24日、ウクライナ国防省情報総局の情報として、ロシア軍が年内に中国軍兵士約600人を受け入れ、訓練する予定だと報じた。ロシア軍が侵攻で得た実戦経験を学ぶのが目的という。
派遣される中国軍兵士は、戦車兵や砲兵、防空専門家らが中心。同総局は「ロシアが中国とともに欧米に対抗する姿勢を如実に表している」とみる。これまで中国はロシアとの軍事協力を進める北朝鮮に対し、「核保有国」の地位確立に向けた動きとして不快感を持っていたといわれ、中朝関係は冷却化していた。
その中国がここへ来て、北朝鮮と同様、ロシアとの軍事協力に積極的な姿勢に転じている。アメリカ政府は、中国が台湾有事の際にアメリカの介入を抑止できる戦力を2027年までに整備する目標を掲げていると分析している。今回の報道が事実であれば、中国には台湾有事を念頭に置き、ロシア軍からノウハウを学ぶ狙いがあるとみられる。
最近、中国は軍民両用部品をロシアに提供するなどロシアの軍事力強化に実質的に協力を始めたとして西側から批判されていた。しかしウクライナの軍事専門家によると、イランが開発した攻撃用ドローンである「シャヘド」を中国が改良したものがウクライナの戦場に投入されているとの情報があるという。
ウクライナ情勢に詳しい別の軍事筋は「侵攻でのロ中の軍事提携関係がより明確になるのは時間の問題だ」と指摘している。ロシア軍にKM23型短距離ミサイルを提供した北朝鮮も、その改良型を提供し始めたといわれ、その命中精度が増したという。
つまり、ロシアと中朝が軍事連携するという新たな三角構図が現実になりつつあるのだ。
残念なのは日本でこうした動きに関する議論が国会も含め、まったくないことだ。北朝鮮も中国も東アジアでの何らかの軍事行動に備えるべく、ロシアと協力しているのに、だ。トランプ政権が日本にも防衛費増額を求める動きも出ている中、今何をすべきか。日本は主体的な国民的議論を始めるべき時が来ている。
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