ロシアがウクライナ戦争で勝つことになれば、勢いにのったプーチン・ロシアが数年後には軍備を再整備し、ヨーロッパに侵攻してくる可能性があるとの認識を、ほとんどのヨーロッパ各国が共有していることが背景にある。ヨーロッパ各国政権にとって、5%への引き上げは「今そこにある危機」への喫緊の対応策でもあるのだ。
すでにサミット前にロンドンでNATOのルッテ事務総長は、5年以内にロシアがヨーロッパを攻撃してくる可能性を指摘。このためヨーロッパが集団防衛力を「量子学的に増やす」必要性を訴えた。
具体的には、➀防空能力を5倍に大幅拡大、②戦車の保有数を数千台増加、➂砲弾の保有数を数百万発拡大、を挙げた。いずれもウクライナの住宅地に対するロシアの執拗なミサイル・ドローン攻撃や、米欧の軍事産業の砲弾製造能力を大幅に上回るロシアの砲弾製造能力を念頭に置いたものだ。
ドイツは総兵力の拡大に乗り出した
ドイツは総兵力18万人の連邦軍を25万~26万人に拡大する方針で、志願者が十分に集まらなかった場合には徴兵制を部分的に復活させる法案の検討を始めている。
現在、ヨーロッパでロシアとの間で軍事的緊張が高まっている地域がある。ロシアと地続きのバルト3国(エストニア、ラトビア、リトアニア)だ。すでに3国は合同で「バルト防衛線」の建設計画を始めており、戦車の侵入を防ぐための障害物陣地の構築も始まっている。
ロシアもバルトとの国境線に陣地の構築を始めており、北朝鮮工兵が作業に参加しているといわれている。2024年後半からバルト海で海底ケーブルが切断されるケースが相次いており、バルト側ではロシアによるハイブリッド攻撃の一環と警戒している。
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