映画≪国宝≫に歌舞伎俳優も驚嘆!  「歌舞伎の松竹」ではなく「東宝」の配給で成功した理由

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故・18代目中村勘三郎は歌舞伎界以外の俳優を積極的に起用したことでも知られる。かつての芝居小屋を再現した「平成中村座」をなどで笹野高史や荒川良々などの個性ある俳優が出演したが、それでも「世話物」といわれる現代にも通じる人情噺や新作歌舞伎の舞台だった。上記の演目はどれも「舞踊劇」あるいは歌舞伎様式にあふれたもので、一般の俳優がなかなか演じられるものではない。

もちろん今回は舞台ではなく、映画であるからショートカットをつないだり、演出による効果は出せるが、それでもこれらの演目を演じることは並大抵ではない。それを吉沢亮と横浜流星が長期間の稽古を経てやり遂げた。また、花井半次郎役の渡辺謙、名女形役の田中泯の演技の評価も高い。少年時代の喜久雄、俊介を演じた黒川想矢、越山敬達の演技も見事だった。

このように主な歌舞伎俳優として登場する人物を歌舞伎俳優でない者が演じて大成功を収めたのが映画『国宝』だ。

渡辺謙
上方歌舞伎の名門の当主・花井半二郎を演じた渡辺謙(C)吉田修一/朝日新聞出版 (C)2025映画「国宝」製作委員会

松竹の配給なら歌舞伎俳優を起用していたか?

では、もし松竹がこの映画に携わっていたらどうだっただろうか。ある歌舞伎俳優に聞いたところ、興味深い返事が返ってきた。「もし松竹がこの映画を作るとしたら、舞台が歌舞伎の世界なので当然、歌舞伎俳優を使うことになる。吉沢や横浜を主役に使うことはできなかったのではないか」ということだった。私自身も納得した。

原作者の吉田修一氏は『国宝』のために、歌舞伎俳優・中村鴈治郎の指導の下で黒衣姿になり舞台をバックから見続けてきたという。吉田氏と李監督は2010年公開の映画『悪人』、2016年公開の『怒り』でタッグを組んでいる。これらは東宝が配給してきており、吉田氏、李監督・東宝の三者の間には密接な関係があったことから『国宝』も東宝の配給になったようだ。

ではもし、主な登場人物を歌舞伎俳優で固めたらどうなったであろうか?

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