エヴァンジェリカル向け公約を実行するトランプ大統領、6月の米最高裁判決で反トランスジェンダー政策が加速
まだ終わらない。1月29日、「K-12(初等中等教育)における過激な思想教育を終わらせる大統領令」を出し、公立学校での“ジェンダー・イデオロギー”に基づく教育や行為を禁止し、違反した教師に刑事罰を科すとした。具体的には、トランスジェンダーの子供の名前の呼び方を自認する姓に基づく呼び方に変えることや、トランスジェンダーの子供の女性用トイレ使用を認めることなどが処罰の対象になる。2月5日に「女性スポーツから男性を排除する大統領令」を出し、トランスジェンダーの女性が政府の補助金を受けている教育機関で女性スポーツに参加することを禁止した。この大統領令に従わなかったペンシルベニア大学は1億7500万ドルの連邦政府の補助金支給を凍結された。
最近では、5月16日にエネルギー省が「連邦政府の資金提供を受けている団体は、ある性(one sex)の人物の別の性(opposite sex)のチームのトライアウト(選考)への参加を認める規則」を修正するという通達を出した。今までの規則は、性差別を禁止する公民権法に基づき、政府の資金を得ているスポーツ団体はトランスジェンダーが女性チームのトライアウトに参加することを認めるとされている。だが、エネルギー省の通達により、今後、その規則は変更されることになる。エネルギー省はトランスジェンダーのスポーツ問題とは関係ないと組織と思われるが、ポイントはそういった組織の通達であっても、政府の資金援助を受けている全ての団体に適用されるということだ。6月16日、民主党の女性議員団が同省に対して通達の撤回を求める書簡を送っている。
政権発足直後からトランスジェンダーに関する多くの大統領令が出されていることは、トランプ政権がいかに、この問題に執心しているかを示している。
女性用トイレ使用禁止に違犯で刑事罰の州も
トランプ政権の反トランスジェンダー政策に先立ち、南部などの保守的な州ではすでにトランスジェンダーの権利を否定する法律や規則が適用されている。最初の攻撃対象は、トランスジェンダーの女性用トイレや更衣室の利用だ。利用を禁止する最初の法律はノースカロライナ州で2016年3月に制定されている。2024年11月にはオハイオ州で「すべての生徒を守る法」が制定され、トランスジェンダーの生徒の女性用トイレ使用の規制が行われた。現在、公立学校でのトイレ使用を禁止しているのは7州、学校と公共施設でのトイレ使用禁止は4州、すべてのトイレの使用禁止は8州である。またフロリダ州やユタ州では、違反者には刑事罰が科せられる。
アメリカの州のほぼ半分が、トランスジェンダーの若者に対するホルモン治療や思春期抑制剤の投与、手術を禁止するか、制限している(民間団体『FindLaw』の調査)。アラバマ州では2023年から19歳未満のトランスジェンダーの若者に対する医療行為は犯罪となっている。医療行為に制限を設けていない州は12しかない。また、アメリカ市民自由連合の調査では、2023年だけでトランスジェンダーに対する医療行為を禁止あるいは制限する法案は100件以上、州議会に提出されている。
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