エヴァンジェリカル向け公約を実行するトランプ大統領、6月の米最高裁判決で反トランスジェンダー政策が加速

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トランスジェンダーを含むLGBTQ政策は保守対リベラルの政治的闘争の中心にある。そのため、政権交代により政策が大きく変わることが多い。

アメリカのみならず、軍隊はLGBTQを忌避してきた歴史がある。アメリカでは、クリントン大統領が1993年に「軍は入隊希望者に対してLGBTQであるかどうか質問するな。LGBTQの兵士はカムアウトするな」という「Don’t Ask, Don’t Say」政策を打ち出したが、これは曖昧かつ妥協的だと評判が悪かった。LGBTQの入隊が正式に承認されたのは、20年後の2011年、オバマ政権時である。オバマ政権は2016年にトランスジェンダーが公立学校で女性用のトイレや更衣室を使用することを認め、ホワイトハウス内にトランスジェンダー用のトイレも設置している。

エヴァンジェリカルの支持を得て当選したトランプ大統領は、これららを引っ繰り返す。2017年にLGBTQの入隊を禁止する大統領令に署名し、教育省は公立学校に対してトランスジェンダーが女性用のトイレや更衣室を使用することを禁止する通達を出した。さらに、2020年に保健福祉省はオバマ政権の時に成立した医療保険制度改革法(オバマケア法)のトランスジェンダー保護規定を廃止し、医師や病院、保険会社がジェンダーに基づく医療行為や保険金支払いを拒否することを認めた。また、連邦刑務所局は、トランスジェンダーの受刑者の収容場所を生物学的な性によって決める通達を2018年に出している。要するにトランスジェンダーであっても、生物学的に男性であれば、男性の刑務所に収容されることになった。

バイデン政権が誕生すると、再び政策が修正された。バイデン大統領は「トランスジェンダーの権利は現代の公民権問題である」と、積極的にトランスジェンダーの権利を擁護した。2021年にLGBTQの軍隊入隊を認める大統領令とトランスジェンダーによる公共施設の女性用トイレの使用を認める大統領令を出した。2022年には刑務所の収容場所は本人の自認する性(self-identity)で決められることになり、医療行為におけるトランスジェンダーに対する差別も禁止した。学校でのトランスジェンダーの生徒に対する差別を禁止する法律も2024年に成立している。

反トランスジェンダー政策を連発

2025年、再びトランプ政権が誕生すると「逆コース」が始まる。政権発足直後の1月20日に「女性をジェンダー・イデオロギーの過激主義から守り、連邦政府に生物学的真実を取り戻す大統領令」に署名し、性別は生物学的な男女の2つの性しか存在しないと宣言。運転免許証やパスポートから「gender」欄を削除し、「sex」欄に置き換えた。さらにジェンダーに基づく医療行為への保険適用を禁止。トランスジェンダーが学校など公共施設で女性用トイレを使用することを禁じた。さらに1月27日、トランスジェンダーの軍隊への入隊を禁止した。1月28日には、「子どもを薬や手術による性転換から保護する大統領令」を出し、19歳以下の未成年に対するホルモン治療、思春期抑制剤の使用、手術を保険対象外とした。

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